龍神の憑依 (自観叢書九 昭和二十四年十二月三十日)※私の先生は患者

      或六才になる女児、全然歩行が出来ない。片一方の手をつき乍ら、イザって歩くのである。脚をみれば全然力がなく、軟骨のようでニョロニョロしてゐる。私は龍神の憑依と思ったので、脚を主に治療した処、半年位で全く治癒したので、その龍神を庭へ小さな池を掘り、宮を建てて祀ってやった。それから数日後、右の女児は名をミヱ子といひ、その年のカレンダーは辰年で、龍の絵がかいてあったので、それをみてミヱ子ちゃんは指さしながら、此こわいものはお祭りの時、三枝ちゃんの手から抜け出たといふ事を、子供乍らに手真似などして親に語ったので、親も先生の仰有った通り脚の悪かったのは、全く龍神の憑依であったといって、感謝と共に語ったのである。

      右の外、未だ数え切れない程種々の実例があるが、顕著なものは、今迄の私の著書に大抵は載せてあるから略す事にする。長い治療期間であったから、忘れた方が多い位である。そんな訳でよく人が先生の病気治療は誰方から学んだのであるかと訊かれる毎に、私は、斯う答える。私の先生は患者である。患者に聞き、患者から教はる。それで段々病気の原因など識るようになったのだから、私の師は患者であるといふのが本当である、といったものである。

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