不安なき社会を造る これが宗教の真の使命 (新宗教新聞三号 昭和二十七年五月二十五日)

      いよいよ日本も、長い間の窮屈な境遇から抜け出られて、自由な身となったことは、気持だけでも何となくノビノビして、久し振りの明るさを取戻したような気がする。しかも終戦前と違い民主々義の国になったことも、それに輪を掛けた次第であるから、猶更ら喜ばしいと思う。そこでいよいよ新しい日本の発足となるについては、お互い宗教人として、これからどういう考え方で進めばいいかということである。勿論宗教本来の使命としては、住みよい明朗な世の中にするのが目的であってそれには何といっても、個人個人に神仏の実在を分らせ、信じさせるより外、有力な方法はない筈である。

      成程物質文明は日進月歩止まる処を知らず、実に結構な世の中になったには違いないが、そうかといって万人等しくその恩恵に浴し幸福な生活が営まれるかというと事実はその逆であるのは、実に不可解千万といわねばなるまい。ではその原因は一体何処にあるかというと、考えるまでもなく、どこかに誤った点が必ずあるに違いあるまい。それを今かいてみるが、何よりも現代文化は物質面のみの進歩であって、肝腎な精神面は全然没却されて来たことである。それというのは余りに素晴しい唯物文化の発達に幻惑されて了い、唯心文化の方は置去りにされたといっていい形である。それが現在人類苦悩の最大原因であるから、このことにわれわれ宗教人は目覚め今回の独立を契機として、戦争のない世界、不安なき社会を作らなければならないのであって、これこそ宗教の真の使命でなくて何であろう。それについては何よりも先ず各宗教の一致団結が先であろう。処が外国は別とし、わが日本のそれは各宗各派というように、余りにも分れ分れになっており、これが長年の通弊であるから、この際何としても小異を捨て、大同に帰一し、総合力を作りたいものである。それによって精神文化を大いに昂揚し、唯物文化の足らざる点を補うと共に両者歩調を揃えて前進してこそ、ここに初めて各宗祖の予言された処の理想世界実現の段取りとなるであろう。

 次に現在世界において最も脅威とされているものは、何といっても極端な思想問題であろう。勿論これとても精神面に欠陥があるからで、この欠陥というのが無神思想に胚胎したものであるから、今後大いに有神思想の教化によって解決すべきであろう。最近政府においても、破壊活動防止法案なる対案を持出したのもそのためではあるが、これとても唯物的手段である以上、一時的で永久性のないのは知れ切った話である。然しわれわれはこういう問題に触れたくはないが、その根本解決策としては、これより外にないことを分らせたいので、ここに一言を費すのである。

 今一つの社会不安は、毎日の新聞を賑わしている通り、近頃の犯罪者激増である。殊に青少年に多いという事実は、全く、寒心に堪えないものがある。これなども原因は宗教心の乏しいのは勿論、親自身もそうであるから、これが子供に感化を与えるからである。処がそれに無関心である当局は、法のみに頼り、真の原因である宗教心などは全然忘れているのであるから困ったものである。併し考えてみればこれも責任の大半はわれわれ宗教人にあるのであるから、今日を境として緊褌一番大いに飛躍的に宗教本来の使命を達成しようではないか。これを全国の宗教家諸君に提言する次第である。

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