霊界叢談「 狐霊 」(天国の福音 昭和二十二年二月 五日)

日本の霊界においての狐霊の活躍は特筆すべきものがある。そうして狐霊は好んで○○宗に接するが、それはその経文を聞くと狐霊の通力が増すからだと、狐霊が言った事がある。その宗の行者もまたよく狐霊を使って霊験を得ている。病気治しや当てもの等を行うが、病気治しはある種の病気に限るので、それは病原である霊が狐霊より下位である場合、それを追出し得るからである。処が狐霊は病気を治した後なかなか手を引かない。それは治った御利益を利用し、その人を自己の利益に役立たせようとするが、それは自己を祀らせる事である。多くは野狐(やこ)である為稲荷に出世したいからで、治病に骨を折るのである。

狐霊は、人間をして精神病者たらしめる事を最も得意とする。曩にも説いたごとく、万物の霊長たる人間を自由自在に操るのであるから面白いに違いない。

よく行者輩が種々の事を当(あて)るが、それはこういう訳である。行者の前へ伺いを乞う相手が座ると、行者の御用狐が相手に憑依し、頭脳に侵入する。そうして相手の意念や記憶、希望等を探知し、直ちに行者に憑依し報告する。そこで行者は「貴方は斯々(かくかく)の事を考えているんでしょう」「斯々の事があったでしょう」などといわれるので、生神様のごとく信じてしまう。また行者が相手に向って「何時頃あなたは、こういうでき事があるから気を付けなければいけない」という。するとその言のごとき事が出現するので吃驚(ビックリ)し終に帰依者となる。これは最初予言する時、御用狐を相手に憑依させておく、狐霊は予言通りの時を狙い、言うた通りの事をするのである。この方法で成功し、生神様のごとくなっているものもある。○○○市の○○という有名な婦人などはこの部類である。

狐霊には稲荷の狐と野狐との二種がある。前者は稲荷大明神と崇(あが)められ、中には眷族も多数で、狐霊界の王者ともいうべきものもあり、各所にある有名な稲荷はそれである。しかるに野狐は失業者であり、浮浪人である。野狐禅や野人などという言葉は、これから出ているのであろう。したがって食物や住居に困り、狐霊仲間では巾が利かないから、早く稲荷に祀られるか、稲荷の眷族になりたいのである。そうして人間に害悪を与えるのも野狐の方が多い。狐は老狐ほど通力が強く、有名な稲荷大明神の本尊は大抵数千年を経たものである。また人間と同化した狐霊は子孫を守護したり、産土神(うぶすながみ)の御用をする等、良狐であるが、人間の不行届等の為立腹した場合人間を苦しめる事がある。老狐は白色で産土神は白狐に乗じて馳走するのである。

ここで、稲荷の由来について簡単に説示するが、伝説によれば、その昔天照皇大御神(あまてらすすめおおみかみ)が豊葦原瑞穂国(とよあしはらのみずほのくに)を豊穣の地となさん為、豊受明神(とようけみょうじん)に命じ、四方(よも)の国原(くにはら)に稲を間配らせ給うた。その時豊受明神は多くの狐を使役し、稲種を各地に播(ま)かしめた。故に稲荷とは稲を荷(かつ)ぐという意味であり、また稲を生(な)らせるから飯成りという説もある。その功によって各地に神として祭られたのである。故にその土地の農民が感謝礼拝及び豊作の祈念をすべきで、それが稲荷の本来である。しかるに何時しか逸脱して、稲荷の信仰が乱れ、農事以外の商売繁昌や花柳界の人事等、私利私欲的祈願の的となったのである。

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