世の中の一般の人は神といえばただ有難いもの、人間以上の尊いものと思い込んで一途(いちず)に礼拝し崇めているが、こういう人達に知らせたい事は、単に神といっても彼の本居宣長のいわれた通り狐、狸、天狗、龍神等もあり、むしろ邪神の方が多いくらいであり、その証拠には世の中には善人よりも悪人の方がずっと多いのが何よりの証拠であり、つまり神界と人間界と並行しているのが世の中の実相であるからである。ところで邪神なるものは目に見えない霊ではあるが、仲々油断のならないものである。というのは邪神はあらゆる人に憑依して悪い考えを起させ、悪い智慧を与え悪い事をさせようとする。しかし悪いといっても詐欺や泥棒、喧嘩や暴力、放火、人殺し等は、誰が見ても悪であるから反って始末がいいくらいだが、それらと異(ちが)って善の仮面を被って悪を行わせる、こいつが最も恐ろしいのである。例えば自分はいい政治家になって、国家社会のために大いに尽したいと思うが、それには大臣級にならなければ駄目だとして、何よりも金を得ようとする。だから少々不正でも見つからないようにやればいいと思って実行すると、案外にも暴露して飛んでもない結果になり、信用はガタ落ち、当分は世の中に出られないという事になる。そういう人も今日目の前に沢山いるから諸君はわかっていよう。
そうかと思うと科学さえ発達させれば、人類の福祉は増進すると思い、それには神を否定する事が肝腎と思い、宗教は迷信として排斥する。また芸術は文化を向上させ、人間の趣味を豊かにさせるコンマ以上のものとして得々(とくとく)としているが、それには違いないが、近来流行しているような妙な文字や絵画はその逆効果が厄介だ。また共産主義などもそうであって、共産社会を作れば大衆が幸福となり理想世界が出来ると思って、中には涙ぐましい程に活動をしている者もいる。
また最も恐るべきは、無神論者のジャーナリストである。彼らは共産主義者と同様宗教を阿片(アヘン)とみているようだ。取り分け新宗教とさえいえば、何ら研究もせずしてインチキ迷信と断じ、軽蔑的に扱い社会から排斥されるようにかき立てる。これが社会人心を健全にする事と思っているのだから困ったものだ。これらも逆効果以外の何物でもないのである。
以上のごとく私は数例を挙げてみたが、その根本はさきに述べたごとく邪神が憑依し、善と思わせて悪を行わせるものであるから、この点に充分注意して瞞(だま)されないようにされたい。