《お伺い》本日の「善と悪」の御論文で、自己保存の為の本能は与えられますが、逸脱しただけは。
《御垂示》逸脱と言うのは。
《お伺い》護ると言う様な。
《御垂示》護ると言うのがおかしい。と言うのは、保存じゃありません。進歩です。競争がなければ進歩――しないんです。
《お伺い》自己なり、団体に許される。
《御垂示》いや、許されるじゃなくて、必要がないんです。一つの――固まりがあるから――泥棒があるから――護るので、泥棒がなければ開けっ放しで良い。
《お伺い》悪はそう言う所から生まれて来たので。
《御垂示》生まれて来たのではなく、神様が――必要があるからつくったんですよ。仮に、地球が未だ固まらない時分にはマンモスとか、色んな龍神を――暴れさせて固めたでしょう。そういったものが今あったら大変ですからね。こんな家なんか、ぶっつぶされちゃう。しかし、それは必要だからあった。悪と言うのは、人間の形をした動物です。処が、動物の形をした人間はもう要らなくなった。だから、家畜の様な大人しいものは残して、虎や狼は段々減っていく。蟒なんかなくなって来る。昔、俵藤太秀郷が松の木と間違えた位だからね。しかし、人間の形をした動物はなくなるんです。
《お伺い》人間に必要だったので。
《御垂示》神様がつくったんだからね。だから、必要と言うのもおかしい位なものです。副守護神と言うのは、そう言う役をしていたんです。獣ですからね。そしてまた、人間は堕落すれば獣になると言うでしょう。獣と言っても、家畜じゃない。獰猛なものです。今、殆んど獣で――ただやり方が小慧しくなっただけですね。