顕幽不離 (天国の福音 昭和22年2月5日)

人間は死後といえども、現世における一切はそのまま持続するので、死の苦痛といえどもそのまま持続するのである。これについての一つの実例をかいてみよう。

以前私の部下に山田某ぼうという青年があった。ある日彼は私に向って「急に大阪へゆかなければならない事ができたので暇をくれ」と言うのである。見ると彼の顔色、挙動等普通ではない。そうして彼に理由を質たずねたが、その言語は曖昧あいまいで不透明な点がある。私は霊的に査しらべてみようと思った。もちろんその当時私は霊の研究に没頭していたからでもある。まず彼を端座たんざ瞑目めいもくさせて霊査法れいさほうを施ほどこすや、彼は非常に苦悶くもんの形相ぎょうそうを表わしノタ打つのである。無論憑依霊ひょういれいである。私の訊問じんもんに応じて霊の答えた処ところは次の如ごときものである。「自分は山田の友人の某という者で、大阪の某会社に勤務中その社の専務が良からぬものの甘言かんげんを信じ、自分を馘くびにしたので、無念遣やる方なく悲観の結果毒薬を仰いで自殺したのである。しかるに自分は、自殺すれば無に帰すると想っていた処、無になる処か、死の刹那せつなの苦悩が何時迄いつまでも持続しているので、あまりの予想外に後悔している。それもこれも専務の奴やつが元であるから、復讐ふくしゅうすべく山田をして殺害させようと思い、自分が憑依して大阪へ連れて行こうと思ったのである。」この言葉も苦悶の中から途切れ途切れに語り終った。そうして苦悩を除去してもらいたいと懇願するので私はその不心得を悟さとし、苦悩の払拭ふっしょく法を行うや、霊は非常に楽になったと喜び、厚く謝しゃし凶行きょうこうを思い止とどまる事を誓い去ったのである。

右憑霊ひょうれい中山田は無我であったから、自己の喋舌しゃべった事は全然知らなかった。私が霊の語ったまま話すと、驚くと共に危険の一歩手前で、救われた事を喜んだのであった。

これによってみても人間はいかなる苦悩に遇あうも自殺は決して為なすべからざるものである事を識しるべきである。次に霊界においては神界、仏界の外ほか、天狗てんぐ界、竜神りゅうじん界、凶党きょうとう界なるものがあり、順次書いてみよう。

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