本教団の事業(光5号 昭和24年4月18日)

 本教団は今三つの事業を企画し、その中二つはすでに着手しており、一つは計画を進めている、それについて解説してみよう。

 右の二つの中の一つは無肥料栽培による農耕である、無肥料栽培とは読んで字のごとく、金肥も人肥も全然使用せず、ただ堆肥のみをもって肥料とするのであるから、いかなる農作者といえども到底信じ得られないであろうが、事実においてその成果の素晴しい事は驚異に価する、まず稲麦のごとき主食においては従来に比し三割乃至五割の増産は確実であり、野菜のごときは五割乃至十割の増産は易々たるものがある、まずその効果を列記してみれば下記のごときものである。

一、肥料代は全然要せざる事
二、凡て量目が増加する事
三、味覚の素晴しい事
四、殆んど虫害を生ぜざる事
五、施肥や消毒薬散布の労力不要
六、人肥を使用せざるをもって寄生虫伝播の危険なき事

 以上のごとくであるが、右の中特筆大書すべきは、現在寄生虫特に回虫保有者は農村にことに多く七、八十パーセントであるというに至っては実に寒心に堪えないものがある、これが二、三年間生野菜を食しなければ寄生虫病は大体消滅するという事は、最近の医学において唱えらるるところである、特に今日日本中に滞在中の米国人は日本産の野菜は絶対口にしないという事実にみても、今後外客誘致の関係上大いに考慮の必要があろう、この点においても吾等の無肥栽培はいかに国策に合致するかは論議の余地はあるまい、吾等の言を信じて数年前より無肥栽培によって大なる成果を挙げつつあるものに、中京地方の農村を始め全国各地方に及び漸次増加の傾向にある事実は大いに喜ぶべきであるが、なお一層拡充して日本全国に及ぼさん意気込みをもって実際的成果を世に示すべく、熱海より一里十国峠の口元に十余万坪の地をぼくし、農耕地を目下開発中である、そうして無肥栽培の理論と方法成績等は雑誌『地上天国』創刊号に詳細掲載されているから参照されたいのである。

 今一つの着手中の事業に、信仰を土台とする結核療養所である、本教浄霊における結核治癒率の卓越せる事は現代の驚異であって、忌憚なくいえば現代医療の効果が一とすれば、吾等の効果は十といっても決して過言ではない、しかも機械も薬剤も全然不必要であるから経済的利益の点においても理想的である、しかしこの文を見ただけでは恐らく信ずる事はでき得まい、私は決して大言壮語するのではないが、実をいえば日本の結核問題解決は吾等の手によらなければ絶対不可能である事を断言してはばからないのである。その成果は何れ統計によって社会に発表するつもりである、それについて所長として某医学博士が快諾、その任に当る事に決定しており医学的にも科学的方法による治病効果を証明すべきその手段を目下考究中である。

 次に今一つの計画中のものにすこぶる新機軸なものがある、それは実行さるべくして未だ試みた事のない施設であるが、何かというと日本美術国際紹介所ともいうべき最も新しい企画であって、言う迄もなく今後日本の進むべき国策を考えるに、商工業部面も大いに必要ではあるが、この面はある程度を越える事は不可能である、現に日本の特産である繊維工業のごときは米英の当事者間においても、将来の競争を懸念し、その対策をてるべく考慮中であるという事を外電は報じている、この様な訳であるから日本の産業も、ある程度以上は困難である事を予想して、今から生産過剰の場合の対策を立てておかなければならないのである。

 処が右のような心配の更にない無限の将来性ある事業としては、観光事業及び美術工芸品の輸出であろう。

 前者は世界的に優れている日本の明媚なる風光を極度にまで利用し、大いに外客誘致の施設方策を執るべきで、道路の改築、ホテルの増築等急を要する事業は多々ある。

 次の、美術工芸品の輸出であるが日本人が手工芸においては世界にその比を見ない程の優秀なる技術を有っているのは、昔から知られているが残念ながら外人は未だ日本美術を真に理解していない、これは朝野共今日迄等閑に付せられていた為であるが実は日本人自身の中にも日本美術の理解者はまことに寥々たる有様である、この点に鑑み吾等は熱海随一ともいうべき最も景勝なる地点を卜し、右の目的に添うべき企画を目下進めており、三千坪の敷地は已に完成している、それについてもまず考えられる事の第一は日本の住宅建築である、近来米国においても日本建築のある部分を採入れたるものは漸次増加の傾向にあるそうで、特に著しいのは天井の低い事や椅子の低くなった等もこの表われである、しかしながらそういう実用方面ではなく、美的方面を大いに理解させなければならない、それにはまず日本建築の粋をちりばめ、近代感覚を通して表現した構成美を遺憾なく建築に表わす事であるたとえば彼地かのちの建築は方法として塗装美を主としているが、日本建築においては木や竹そのままの自然の持味や、障子のごときいかにも瀟洒しょうしゃにして親しみ深いものや、砂壁のさび等も取入れ、その一部に現代の一流所の美術工芸家の作品を網羅し、外客の審美眼に訴えんとするのである、この点以前のごとき外人向きとして迎合を事とし、卑俗見るに堪えざるものであってはならない、飽迄も日本固有の美的要素を充分発揮させたるものを陳列し紹介する事こそ、今後の国策上最も喫緊なる問題である、もちろん注文に応じて大いに輸出に努力し、外資獲得の一役を担う覚悟である。

 以上述べたるごとき新企画の三大事業を一着手とし、漸次各面に及ぼさんとするのである。 

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