無肥四十年の蜜柑 (栄光133号 昭和26年12月5日)

 私は最近無肥料で、四十年間に及んだという蜜柑を作っている信者の人から献上されたので、早速食べてみたが、其美味たるや実に何ともいえない美味さで、到底筆や言葉で表わす事は出来ない生れて初めての旨さである。之についていつも果物や野菜を無肥料で作ったといって信者からいろいろ貰うが、成程普通のものより確かに美味ではあるが、何かしら物足りないものがあるようで、美味満点とはいえないが、之は全く土か種かに肥毒が残っている為であって、どうしても肥毒の抜け切る迄には、四、五年以上経たなければならない。それで初めて本当の味が出るのである。という訳で、もしも右の蜜柑のような純粋な無肥果実を店で売るとしたら、それこそ評判になって、どれ程沢山売れるか分らないであろう。又外国へ輸出でもすると、輸出額も他に見られない程の巨額に上るであろうから、国家経済にも大いにプラスになるのは間違いあるまいなどと、そんな事も思ってみたのである。処が近頃清浄野菜といって、人糞を使わない野菜を売る店がチョイチョイ出来たそうだが、成程蛔虫其他の寄生虫防止にはなるが化学肥料を使う以上、味はよくないに決っている。だから信者の中で其道に経験のある人は、無肥料野菜でも果実でもいいから、大いに栽培して売ったら、金の儲かる事は請合である。

 併し単に金儲けばかりではない。自然栽培の実物宣伝にもなるから、一挙両得という訳である。どうです、信者の人で早速始めたらと思うのである。

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