『文明の創造』科学篇「肺患と薬毒」 ( 昭和二十七年)

 現在の結核療法に就(つい)て注意すべき事は、今最も有効とされているものに気胸療法がある。之は肺に空洞のある場合、肺胞を萎縮させて出来るだけ縮小させようとして肺の活動を鈍らせる。つまり肺の安静法で、その為空洞の原因である濃度の喀痰(かくたん)も固まると共に、空洞も縮小され、一時は小康を得るが、普通人の生活をするようになると再浄化が起り、元の木阿彌(もくあみ)となるのが殆んどである。としたら之も根本的療法でないのは勿論である。

 其他、結核以外の肺患に対しても、簡単に説明してみるが、肺壊疽(えそ)とは肺臓と肺膜の中間に腫物が出来るので、放置しておけば腫れるだけ腫れて自然に穴が穿(あ)き、多量の血膿が痰となって出て全治するのである。之も浄化の一種であるが、医学は浄化停止をするので仲々治らない。遂に不結果に終るのである。又粟粒(ぞくりゅう)結核は肺胞にブツブツが出来るのだが之も皮膚の湿疹と同じようなもので、一種の浄化であるから自然にしておけば、ブツブツから排膿されて全治する。又肺臓癌は肉食多量が原因で、肉中に含む一種の毒素によって血液が濁り、それが肺臓内に溜り、一旦硬度の腫物となるが、浄化作用によって逐次喀痰となって出る。然(しか)し此病症は性質が執拗で長くかかるのは勿論である。原因は菜食不足の為であるから、菜食を多く摂るだけで全治するのである。何よりも肉食多量の西洋人に多いにみても肯(うなず)かれるであらう。次に麻疹の際肺炎を併発する事がよくあるが之は何でもない。只呼吸頻繁の為驚くが、之は麻疹が肺胞に表われ肺の容積が減る為で、其儘(そのまま)にしておけば二、三日で必ず治るものである。

 次に、結核に関聯(かんれん)した病気に喉頭結核がある。之は結核の末期に発生するもので、特異性としては声が嗄(しゃが)れる事と、食事の際咽喉(のど)が痛み、嚥下(えんか)困難になる症状である。此の原因は痰が咽喉を通る際猛毒痰である為、気管や咽喉の粘膜を刺激し加答児(カタル)を起すからで、此痰は最も古く、腐敗の度も強いのである。だから痰の出る間は仲々治らないから先ず見込はない。而(しか)も此時は衰弱も酷くなっているからでもあり、医師も喉頭結核と判るや、必ず匙(さじ)を抛(な)げるのである。次に腸結核であるが、此症状は臍(へそ)を中心に腹部全体に渉(わた)って、無数の固結が出来る。勿論押すと痛いからよく判ると共に、必ず多少の熱がある。此固結が熱で溶解され、下痢となって毎日のやうに出るが勿論此固結は薬毒の固まったものであるから服薬を廃めなければ治らないに決っている。又下痢の為衰弱を増す病気だから、医師も恐れるのである。

 最後に、結核が他の病気に較べて、特に執拗で治らない原因をかいてみるが、一度結核となるや、何と言っても薬物が主となる以上最初から種々の薬物を体内に入れる。それが原因となって、経過が長引くので患者は焦って凡ゆる薬物を求めるという鼬鼠(いたち)ゴッコになり漸次(ぜんじ)体内に薬毒が溜り溜ってどうにもならなくなる。其薬毒が肉体を蝕ばむ以上遂に不治となるのである。そうなると痰迄が薬の臭いがする位であるから、全く恐ろしい錯誤と言えよう。従って三期結核は薬毒病と言ってもいい位で、斯(こ)ういう患者を私はよく治療したが、その目的は薬毒を除るだけである。何よりも薬毒が減るに従って、漸次(ぜんじ)恢復(かいふく)するに見て明かである。但し此薬物を除る方法こそ私の発見した浄霊法である。

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