医学迷信(未発表 昭和27年12月26日執筆)

 今日医師諸君はもちろんの事、インテリ階級の人達は例外なく信仰で病気が治る事実に対し、決って左のごとき解釈をする。大体病気というものは、病は気からといって精神的影響は案外大きいものであるから、信仰で病気を治そうとする場合、その宗教の教師などは、神仏の利益を過大に説き、言葉巧みに必ず治るようにいうので、何しろそれまで医療その他の療法でも治らないで困っている際とて、まともに信じてしまい、まず精神的に快方に向うので別段神仏の利益りやくではない事はもちろんである、という観方である。そんな訳だから、本教の治病奇蹟がどんなに素晴しいと聞かされても、右のような解釈で片付けてしまうのであるから、吾々は憤慨を通り越してあきれるばかりである。もっともそう思うのも無理はないかも知れない。

 なぜなれば、今日までの信仰療法の多くがそれであるからで、本教もそう見られるのであろう。ところが本教の病気治しは、それらとは根本的に異っている事で、それをこれから詳しくかいてみるが、まず本教へ治療をいに来る限りの人々は、もちろん最初から疑っている。それも無理はない。何しろ新聞雑誌はもとより、大部分の社会人殊に智識人などは必ずといいたいほど病気は医薬で治すもので、しかも今日のごとく素晴しい進歩した医学であるから、これより外に治るものは世の中にない。しかも最近アメリカで発見の新薬や精巧な機械、手術の進歩等々をみても分かる通りで、まず安心してまかせられるのであるから、そんな新宗教の病気治しなどは問題にならないではないか。だから、そんなものを信用すると飛んでもない事になるかもしれない、それこそ迷信以外の何物でもない、と、もっともらしく言われるので、大抵な人はそれに乗ってしまい、たびたび機会があっても逃してしまうのはよく聞くのである。ところが病気の方は快くなるどころか、益々悪化し、ついには死の一歩手前にまで追い詰められる結果、自分から医療に愛想をつかし、本教に縋るようになるが、そういう人は極く運のいい人で、大部分の人は医学にはまり切ったままお国替えとなるので、気の毒なものである。中には病気は治らないばかりか、金は掛かり放題、苦しみは増すばかりと来ては、迷わざるを得なくなり、何かいい方法はないものかと煩悶はんもんの際、たまたま本教の話を聞いても、これほど科学が進歩した今日、そんな不思議な事があってたまるものかと、テンデ話にならないから、外にどうしようもないので、ではだまされるつもりで一度試してみようくらいのはらでやって来る人が大部分で、初めから信ずる人などほとんどないといってもいい。としたら精神作用など微塵もないはずである。ところが来てみると、医学の素養など全然なく、風采ふうさいのあがらない先生らしい御仁が、薬も機械も使わず、身体にも触れず、ただ空間に手をかざすだけなので唖然としてしまい、大病院や博士でも治らないこれほどの大病が、あんな他愛ないやり方で治るなどとはどうしても思えない。だがせっかく来たので帰る訳にもゆかず、マアー一度だけ試してみようとやって貰うと、これはまた何たる不思議、たちまち病気以来かつてないほどのいい気持になり、苦痛も軽くなるのでいよいよ分からなくなる。しかし分かっても分からないでも快くさえなりゃいいという訳で、どんな頑固な人でも、無神論者でも一度に頭を下げ、百八十度の転換となるので、これがほとんどの人の経路である。以上の事実を仔細しさいにみても本教治療法のどこに精神的狙いがあるかという事である。ところがそれに引換え、医学の方はどうであろうか。むしろ精神面の方は実に遺憾なく調ととのっている。まず当局はじめ言論機関、学校教育等々医学の進歩をさかんに唱え、これ以上のものはないとして、病気になったら手遅れになるな、一刻も早く医師に診て貰いその指示通りにせよ、それが正しい方法で、決して外の療法などに迷ってはいけないと極力注意する。しかも立派な大病院、有名な博士、完備せる施設、精巧な機械、薬等々実に至れり尽せりで、これを見ただけでもどんな病気でも治りそうに思われ、安心してまかせ、するのが今日の常識となっている。このような訳で医学を信ずる人はあっても疑う人などほとんどないのは誰も知る通りである。

 以上によってみても、医学に対する信頼は百パーセントであるに反し、吾々の方の信用は零よりもマイナスである。にもかかわらず、その結果は散々医療で治らない病人が、我方へ来るやドシドシ治ってしまうのであるから、その治病力の差は、月とスッポンといっていいくらいで、この事実は公平に言えば、現代医学こそ迷信であり、わが医学こそ正真であると断言してはばからないのである。つまり医学を信じて生命を失うか、信じないで助かるかのどちらかであるといったら、恐らくこれを読んで愕然がくぜんとしない人はあるまい。しかし歴史的にみても分かる通り、時代の変遷は昨日の真理も今日の逆理となる事さえ往々あるのであるから、あえて不思議ともいえまい。このような明らかな道理が今日まで分からなかったのは、全く過去の亡霊に取り憑かれていたのはもちろん、それを発見する人が出なかったからであろう。また世間こういう人がよくある。もしそんな事で病気が治るとしたら、医者も薬も要らないではないかと言うのである。全くその通りで、医者や薬が無くなったら、世の中に病人はなくなると答えざるを得ないのである。以上のごとく現代医学こそ世界的迷信の最大なるものであるから、人類から病を無くすとしたら、何よりもこの迷信を打破する事で、これが先決問題であろう。


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