大黒様のお話 −−会主の御講話の続き−− (光明世界一号 昭和十年一月一日)

 最後に、此処へお祭りした大黒様の事に、就いてお話したいと思います。

 私は、一昨年の暮から、恵比須大黒をお祭りし、人にも祭らしてゐますが、恵比須大黒に就いての、細いお話は、他日お話する事に致しますが、之を祭ると、確かにお金が入って来ます。病貧争が無くなるに就いて、貧をなくする、之は観音様が、大黒様をお使ひになるのであります。

 五月一日に、応神堂へ引越して来ました時、其日に、俵の上に踊ってゐる大黒様が、偶然、手に入ったので大変縁起がいゝと思ってゐると、今日迄、予想外に金が入りました。全く不思議に入るので不自由しなかったんであります。之は大黒様が、働いてくれたんだと思ってをります。最近その大黒様を、是非欲しいといふ人がありましたので、此の大きい大黒様が、入る事が判ってゐたので、差上ることにしたんであります。

 暮の廿四日の日に、麻布に、恵比須大黒が、沢山ある道具屋があるといふので、川本さんに聞いて行ってみましたが、正面に此の大きな大黒様があったのであります。またその外、小さいのが沢山有りましたから、訊いてみますと、道具屋の主人は留守だったんで、値段は判らず、小さいのは売るが、大きいのは永い間家に祭ってあるので、売るか売らんか判らんとの妻君の話、兎に角、主人が帰ったら電話で返事するといふので、その儘帰ったんであります。間もなく電話が掛って来て、アレは、値段は電話では云へぬから御都合の時に、お出でを願ひたいと、いふ事なので、こちらも忙しいから行けぬ、序(ツイデ)の時に来てもらいたい、と返事をしたんです。処が行けないと言ってゐたのが、軈(ヤガ)て、一時間計り経ってから、やって来たのであります。その道具屋は以前から観音様と大黒様信心で中々熱心家なんであります。最近一週間の内に二度迄も奈良の東福寺へ行って、如意輪観音様を拝んで来て、丁度此朝、奈良から帰って来て、用足しに出掛け、帰ると家内から聴いて早速お電話したんですが、電話をかけさして夕飯を食ってると、体がブルッとして何物かに引寄せられるやう、居ても起ってもゐられぬ気がして、不取敢(トリアエズ) 、小さい、恵比寿大黒を七八組持ってやって来たので、今迄他所(ヨソ)へもって出た事は一度もない、斯んな事は初めてだ、といふて大変に驚いてゐました。 

 それは千手観音力で引寄せられるんだから、仕方がないと、私は言ってやり、持って来た恵比寿大黒六組を全部買ってやったんであります。それからあの大きな大黒様がほしいと言へば、成程そう言はれれば、先生の方へあの大黒様が行き度がってゐるやうに思はれ、いよいよ私から別れる時が来たのかも知れません。然も今日の此の二十四日は巳の日であって大変結構な日ですが、卅一日は子の日でありますから、卅一日に持って伺ひます。と言ふ話になったのであります。値段も定めないのです。

 この大晦日の子の日といふ事は、何十年来滅多にない事で、珍らしい事なんだそうであります。其の後二三日してやって来ましたが、あの大黒様がフワリフワリ雲に乗って、家から出て行く夢をみたといふんです。私は、それは未だ貴方が、大黒様に執着があるから、それを取る為だと説明しました。道具屋は、それを絶対に他所へ出してはいけないと言ふ意味に、とってゐたんで、私の言葉を聞いて驚いてをりました。其の後またやって来て、今度は大黒様が竹の手すりの中に居た夢を見たんだといふのです。それで、その夢は大黒様が此方へ来られゝば竹の手欄(テスリ) の中に祭られるんだと言ふ事を申したんで、丁度、私も、昨晩家内とそんな話をしてゐたんだといってやりました。元その道具屋も数万の金を持ってゐたんだそうですが、三、四年程前から、する事為す事損をして、すっかり無くして了ったんだそうですが、それは大黒様が、此方へ来るべく手放さす様にするので、そうされたのであらうと思ひます。 

 それで卅一日の夜遅く、此の大黒様を持って来たやうな訳であります。そうして大晦日の夜遅く一時頃、観音様と大黒様をお祭りしてから今迄土砂降りに降ってゐた雨が、ピタリ歇(ヤ) んだのは不思議でありました。其の晩その道具屋は、実に名残惜しそうに如何にも、別離苦の悲しみに堪えないやうに、大黒様に暫く取縋ったりして帰って行きました。丁度娘を嫁に与(ヤ) ったやうな状態でありました。それで観音様は大黒様を働かして、今後は非常に金を集められるだらうと思ふのであります。

 本日の発会式のその前日に、大黒様が、どうしても来なければならぬといふ事も、実に不思議であります。応神堂を始めた時も今度も斯うして、大黒様だけ御一体入るといふ事も不思議であります。いくら神様は有難い信仰は結構だと言っても物質が、不自由だったらどうにもなりません。仕事が出来ません。 

 宗教に由っては物質欲を非常に制しますが、物質をいゝ事に使ひ楽しく暮すといふ意味に於ては結構なのであります。観音様は非常に貧乏がお嫌ひでありまして観音様をお祭りし大黒様を祭り、観音行をすれば物に不自由するやうな事は絶対に無い事を私は保證致します。それから、大黒様をお祭になる方は何時でも私が開眼」をして差上げますから持ってお出になって下さい。

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