日本医学の建設(三) 脳疾患 (光明世界 四号 昭和十年七月二十五日)

脳病には、大体数種あるが、先づ、脳貧血から説明する。

脳貧血とは其名の如く、脳の貧血であって如何なる原因かといふに、元来、人間の血液は、心臓に依って浄化される事は、今日迄の医学上の解釈であるが、実は、心臓ばかりで浄化するのではない、血液自体が循環運動をする、其運動其のものに由っても自然浄化をするのである。浄化の結果は、循環の速度を増すのであって、それが健康を増す事は、医学で説明の通りである。

然るに、血液浄化に因って其不純物が、自然滞溜する場所があるのである。其場所は主に頸部の周囲及び肩胛部なのである。頸部一帯特に、延髄に、汚血滞溜する時は、身体より頭脳に送るべき血液通路である血管が圧迫さるるを以て、頭脳が要すべき、血液の量を送る能はず、従而血液に不足を来すのである。之が即ち、脳貧血であって、症状としては頭痛及び、頭脳の圧迫感、眩暈(メマイ) 、耳鳴り、蓄膿症、眼の翳 (カス) み等の外、反射作用に由る胃の不快と嘔吐感、陰欝、世に、神経衰弱と称する症状である。

 大体以上の如くであるが、之は、余が浄血療法に依る時は容易に快癒するのであって、其治療日数も、普通は一週間位、重症にて二三週間もあれば、確実に全癒するのである。長年の神経衰弱が一二回の治療にて、全癒せし事も屡々ある。

脳溢血及び脳充血

此病気は、近年益々増加の傾向があって、高血圧の人などは、非常に恐怖を抱いて居るが、之は少しも驚くに足りない。余の処へ来れば、雑作なく治癒して、絶対脳溢血は起らない事を保證出来るのである。此の病気が何故多くなったかと言ふと、現代日本人は、肉食を多く採り、無暗に薬剤を服用するから、血液は混濁(コンダク)する計りである。其上、頭脳を過度に使用するから、丁度脳溢血を製造して居るやうなものである。前述の如く、此病気は、血液混濁が原因であって、動脈硬化と同じ訳である。

血液中の混濁は、不断の浄化作用に依り、其残渣とも言ふべき毒血は、主に後頸部、延髄附近に集中溜結するものである。そして、之は必ず、右か左か一方に限られてをり、診断の場合、左右孰かを指圧すれば、はっきり別るのである。然るに、此毒血の溜結が益々増量して、或程度を超ゆる時、毛細管を破って、小脳部へ溢血するのである。これを称して脳溢血といふのである。そして此溢血が多量に由る悪性を脳充血といふのである。

此病気の特長として、一時、人事不省に陥り、軽症は一昼夜位、重症に到っては二週間位を、其儘持続するのである。幸ひに覚醒するや必ず、左右孰かの腕、及び脚部 麻痺してブラブラとなり、一時は、全然、知覚を失ふもので、特に重症に於いては、 覚醒するや舌の自由を失ひ、言語不能となるのである。又病気の発生の場合、鼻血、 涎(ヨダレ) 、嘔吐等を伴ふものである。

此病気は、前兆としては、血圧の昂騰(コウトウ)、頸部及び肩の凝り、手足の一部的麻痺、言語の不明晰等で、斯くの如き症状のある場合、余の療法を施せば、普通二三回乃自(ナイシ) 五六回にて全く治癒するのである。

不幸にして、発病するとても、直に浄血療法を施せば、一週間乃至二週間位にて、大体快癒し、言語は、大略平常の如く、腕は自由となり、歩行も可能となるのである。然し、何分一時乍らも、麻痺したる後なるを以て、全く平常通りになるには、一 箇月位を要するのである。

然るに一般世人は、医療に依って回復せんとするのは止むを得ないが、医療によっての治癒は、なかなか困難で、医学的には療法がないとさへされてゐる。併し、症状 に依っては二三年にして自然に治癒するものもあるが、悪性のものは十数年に渉っても離床する能はずして、終に死に到る者もあって、此病気位、人により、重軽の甚だしいのはないのである。従而、治癒の時日を予定する事の困難なのは勿論である。中には悪性でなくも、誤れる療法を持続せられし為の障害によって早く治るべき症状 も、長日月を費さねばならなくなった患者も、少くはないのである。そして、痛みのある症状ほど治癒し易いのは、経験によって瞭かな処である。

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