御教え*箱根美術館/銀座に美術館/「東洋美術協会」(御垂示録10号 昭和27年6月1日①)

箱根美術館

《御垂示》美術館はだ中に入って見ないですか。皆見ないでしょう。

《お伺い》外からは拝見致しております。

《御垂示》中に入っていいですよ。あとで入って御覧なさい。もう大分だいぶ中も――七、八分通り出来てますからね。

《お伺い》想像致して居りましたよりも。

《御垂示》良いでしょう。私もそうなんですよ。想像したより良く出来たんですね。あんなに良く出来ようとは思わなかった。なかなか大工も上手くやったですよ。

《お伺い》下の方から拝観致しましても、とてもよろしゅうございます。

《御垂示》そうですよ。一遍やると、もう大体見当つくが、初めてでは見当がつかないのでね。

《お伺い》図面で見ましたのより、建ててみますと立派でございます。

《御垂示》思ったより立派ですね。だから商売人には頼めないですよ――設計や何かはね。それで、商売人はこっちの言う事を聞かないんです。素人が何言ってやがるんだといった具合で変えちゃう。やりにくくてしょうがない。そうかといって商売人がやったのを、そうぶち壊す事は出来ないしね。あれは私の思う通りにやったんです。

《お伺い》あんまり評判が宜しいと、方々から頼みに参ります。

《御垂示》何百万円も献金すればやってやりますよ。

《お伺い》奉仕隊の座談会に月二回行って居りますが――その中で、一体明主様は先はこうなると、はっきりお分かりになってお造りになるのか、お言葉に出されるとそうなって行くのか、其の間はっきり説明が出来ないと話しました事がございますが。

《御垂示》そうはっきり言う事は出来ないが、まあ――どっちもあるんでしょうね。大体は見当がつきますがね。大体非常に浮かぶんですね。たちまちパッとそこに出るんです。だから、いずれ造る光明殿――あれも目に見える様に写ってしょうがないです。あれは白亜の十字形になって、何段にもかどがあるんです。真っ白でね。これも世界にないですね。

《お伺い》真っ白と申しますのは、この間の日本は白という意味でございましょうか。

《御垂示》そうではない。白は見た目がいいからですからね。だからアメリカなんか非常に白を使います。コルビュジエ式というのは白色が最も適当するんです。それでよくやるんです。ですから、美術館に白という話もあったけれども、どうも私は白では面白味がない。うま味がない。

《お伺い》白では有触ありふれておりますので。

《御垂示》そうです。それに白は何にでも使うからね。やっぱり美術館では、特殊な――ちがった風に見えなくてはね。だから建築なんてのは、建築そのものの用途にピッタリ合わなくてはならない。美術館なら美術館らしく、それにピッタリ合わなくてはならない。環境、位置ですね。それから箱根の様に山があり木があるというのは、それに調和する様にしなければならない。

《お伺い》瓦の色がとてもよろしゅうございます。

《御垂示》あれはいいですね。私はもっと薄いのを注文したんですがね。でもまあ、我慢して置きます。

銀座に美術館、美術品

《御垂示》いずれ私は銀座に美術館を造りますがね。これは、丁度銀座に調和する様な、それで他にない様な飛び抜けて良いものです。そういうものを造ろうと思ってますがね。実現するだろうと思ってます。ちゃんと敷地はあるんですからね。大体設計も――私の設計ですが――してありますしね。東洋美術協会というのを先月作ったんですがね。私が顧問になってます。会長は作家の武者小路実篤むしゃのこうじさねあつ――あの人が会長になっている。皆名士ばかりですよ。小林一三こばやしいちぞうとか大倉喜七郎。政治家では星島二郎。そういったレベルの五十幾人です。当館も今度招待して見せます。この連中の――「東洋美術協会」の機関として銀座に造ろうと思う。間口十四間、奥行十六間、約二百坪三階建にして、一番奥を古美術にして――会員には細川護立ほそかわもりたつが居ますからね。みんな持ってますから、そういうものをみんな出させて、二階は個展ですね。個展をやろうと思う。個展は銀座でやれば一番ですよ。見てくれますからね。個展は一番人の目につく所でやらなければならない。一番目につくのは銀座ですからね。広いですから――二百坪の家だから、個展が三つや四つは出来ますよ。下を売店にしょうと思う。

《お伺い》このごろ個展も流行りますので。

《御垂示》流行りますよ。随分入場者があるだろうと思うが、この収入が大変なものです。私は何でも算盤を取る。それで時々催をやってね――琳派りんぱ展とかね。そういう時には私が何しますがね。これは非常にいいと思いますよ。美術を奨励する意味に於てね。何といっても銀座ですよ――多くの人に見せるのはね。実際上野なんかではしょうがないですよ。わざわざ行くのは大変ですからね。個展なんか上野でやっても、見に行く人はありませんよ。その時の美術館は、これは一番目につきますから、うんと変わった奴にしようと思っている。

《お伺い》敷地は随分致しますので。

《御垂示》けれども、もうこっちの――私の権利じゃないが、権利を持っている人を押えてますからね。アメリカの美術館の事情なんかも良く知った人です。色んな写真を持って来たしね。

《お伺い》やっぱりフランスでございましょうか。

《御垂示》やっぱり英国ですね。世界一のはね。ヨーロツパのはフランスに集っているんですが、世界的に言えば、やっぱりロンドンですよ。それは割合古くから集めてますからね。アメリカのは新しいからね。やっぱり、しっかりしたのは英国ですね。

《お伺い》イタリヤはだいぶ分散したそうで。

《御垂示》そうですが、やっぱり美術の方は盛んですね。相当画家の偉いのが出来てますね。

今上野でやってます。行ってみようと思ってますがね。まあ、絵では今はフランスですね。だけども私は、油絵は絵と思って居ないんですよ。絵と美術工芸品の間のものです。

《お伺い》然し、油絵も日本化したものが御座います。

《御垂示》油絵が日本化し、日本画が西洋化した。之でいいんですよ。両方で行ってね。どうも油絵という奴は面白くないですよ。古い印象派時代の――ルネッサンスですが、あれは又、彩色した写真みたいなものです。それから現代の油絵ときたら、精神病の展覧会みたいで――精神病の展覧会をやれば、きっとああいうものになる。第一[他]人ひとが見ても解らない様なものだからね。だから油絵はしょうがないですね。やっぱり絵は東洋画ですね。此処の美術館は絵画に一番力を入れましたからね。絵画の良いものは一番余計出ますからね。之丈は――日本の絵画の良いものは、外国には絶対ないですからね。現代の画家なんかは、見ようと思っても見る機関がないですから、そこでそういう人達が頭を養うに非常に良いと思うんです。本当に良いものは――今の相当の大家たいかは別ですが、中から下の画家では見た事がないでしょう。普通の人は勿論そうですがね。だから美術館はそういう人達の教育機関として非常に効果があります。

《お伺い》橋本関雪のは。

《御垂示》見に行きましたよ。けれども高い事を言っているのでね。話にならないです。ですから一つも買わないです。

《お伺い》良いのが御座いましたので。

《御垂示》少しはあります。四、五点ありますね。ああいうのは相場を知らないでしょう。だから高くさえあればいいと思って、つまりそういうものは――古い良いものは幾ら高くても売れるという様な、可笑しな錯覚になっちゃうんです。そういうのは沢山あります。丸で、今戸いまど焼の泥人形みたいなものが百万円とか、絵なんかも二百万円だとか三百万円だとか――素人はしょうがないです。だから何時も言うんですが、つまりメシヤ教の教祖といったら、金がうんとあって赤ん坊みたいなものだという様に言っている。人を馬鹿にしている。此間も貰ってもしょうがない様なものを、それを五百万円という。そういうのが沢山ありますね。月に一人や二人はきっとあります。こっちに来る少し前に熱海で、一人の信者の人が紹介したんですが、其人は大変大事にしている曼陀羅まんだらですね。掛物の大きいのね。曼陀羅を写したものなんです。刺繍みたいにね。そういうものを貰ってもしょうがないですね。汚い変な物でね。それから支那の六朝仏りくちょうぶつといって持って来たが、支那の割合に新しい――乾隆けんりゅうのものですね。真鍮みたいにピカピカ光った坊主の像みたいなものですね。曼陀羅なんか人に譲るというのは勿体ないと先でお祭か何かして、京都から東京に持って来るのに、割れたり損じたりしたらいけないというので、自動車で来た。処がこれと思うのは一つも無いんですよ。貰ってもしょうがない。それでガッカリして、何でも一つ貰って呉れという。寄附をするというんです。処が貰うものが無いんですが、花生があったんです。あれなら無事なものだからと、それでも貰って置きなさいと貰って置いたんです。それに似た様な事がよくあります。以前川崎の方から来たので、掛物だとか道具だとか五、六十点ありましたが、川崎では一番豪のものなんです。番頭か何かで三人で来ましたが、見ると一つも無いんです。夜店の物のみですね。本当の事を言ったらガッカリするだろうと思いましたね。三代前の先祖が集めたのをとってある――家の宝にしていたんですね。恭しくして大変なものです。光琳が一つありましたが、贋の物なんです。本当の事を言ったら失望するだろうと――それを言うのがつらいですから、私は言わないんです。兎に角私の趣味と違うから――まあ、道具屋に見せなさい。道具屋に見せれば、道具屋におどされますからね。その方がいいからと言って帰しましたがね。実に可哀相なものですね。ああいうものは、本当のものは無い。滅多にないですからね。良いものがあっても、之はというものは百に一つですね。道具屋が大自慢で持って来て――七、八つ持って来て一つあるかないかですね。そういう時には私はしょうがないから、一つ預って置くんです。そうすると其次に何か買う様なものを持って来ますから、持って来た時にそれを返す様にする。それから、返す積りで居ると、沢山持って来て買わないでしょう。それで返す積りで居ても、返さないで――そういう事もよくあります。だから兎に角美術館に出るものは、一つと雖も――どんなものでも兎に角何処か値打ちのある処があるんです。

「東洋美術協会」

《お伺い》美術館の宣伝方法は何もとらないので御座いますか。

《御垂示》何もとらない訳ではないが、最初に新聞記者を呼べば何か書くでしょうから、それで様子をみてね。最初からドヤドヤ来られては堪らないからね。その内に世間に知れて来ますから、広告なんかする必要はないと思いますね。

《お伺い》招待するのも大分多くなっております。

《御垂示》ですから一、二、三と別けて、三の人は優待券。それから案内状ですね。それで郵便丈で、それでいいと思います。

《お伺い》何時頃からで。

《御垂示》七月六日が日曜ですから、其次の日曜の十三日ですね。其二日あたりでいいでしょう。其方が来る人もいいでしょう。それから場合に依ったら六月二十九日の日曜ね。それも一日出してもいいだろうと思う。呼ぶ人がすっかり決ってから、日曜を二回乃至三回ですね。そう思っている。「東洋美術協会」の会員丈でいいじゃないかと思う。今に知れて来れば、評判になって来ずには居られないですよ。中には幾度も来る人があるでしょう。とても一ぺんや二へんでは見切れないですからね。本当に好きな人だったら、一室見る丈で半日位掛りますね。一品でも、只のものはないですからね。何か文句言う様なもの許りですからね。

《お伺い》東洋美術〔協会〕に並んでいる品物はみんな良いもの許りで御座いますか。

《御垂示》いや、そうでもないです。唯、何か品物を売りたいという人があっても、知っている道具屋がないでしょう。そうかといってつまらない道具屋じゃ駄目だから――銀座にあの位の店を張って居れば安心だから、あそこに持っていくんですよ。だから時々素晴しい物があるんですよ。私はそういう物丈を買ってますがね。この連中丈は一纏めにして招ぼうと思う。

 東洋美術協会役員というのが来ているんです。私が読みましょう。それで説明をします。

 会長武者小路実篤、之はみんな知ってますね。副会長北昤吉きたれいきち、多摩美術学校長ですね。

 団伊能いのうというのは参議院議員で、団琢磨たくまの息子ですね。それから東京大学名誉教授藤懸静也ふじかけしずや、この人は浮世絵では権威です。日本で一番でしょう――浮世絵ではね。それから橋本凝胤ぎょういん、薬師寺の管長です。衆議院議員星島二郎。国立国会図書館長金森徳次郎。加納久朗ひさあきら。東宝社長小林一三いちぞう。衆議院議員三木武夫。それから私がメシヤ教主、箱根美術館長としてある。大倉集古館長大倉喜七郎。法隆寺管長佐伯良謙。元フランス大使沢田廉三れんぞう。衆議院議員高瀬荘太郎。評論家徳富蘇峰とくとみそほう

 評議員、読売新聞社顧問馬場恒吾つねご。日本放送協会長古垣鉄郎ふるがきてつろう。美術研究家原田治郎。平櫛田中ひらぐしでんちゅう――彫刻家ですがね。此人のも出ます。芸術院会員板谷波山いたやはざん、此人のも二、三出ます。芸術院会員香取秀真かとりほずま、之は鉄の細工では日本一ですね。松田権六ごんろく、之は蒔絵師では日本で一番です。中村勝馬。中島久万吉くまきち。元奈良美術院長新納忠之介にいろちゅうのすけ尾上柴舟おのえさいしゅう、之は書家で――歌ですね。ああいった内の書では日本一ですよ。それは上手うまいいものですよ。あの人丈ですね。平安朝時代の歌読み位にどうやら書けるのはね。歌も上手いですね。私は一番好きです。新しい人ではね。尾崎洵盛じゅんせい、之は元男爵だったんですが、支那陶器では日本一ですね。之はこっちの顧問にする積りだった。鈴木一。遠山孝。梅原龍三郎、昨日かヨーロッパに行きましたが、此人は油絵では一番です。今、日本で油絵といえば此人丈ですよ。此人は美術館に二つ位丈出そうと思ってます。此人のは世間でも第一人者としてますね。此人の油絵は良いです。というのは、此人は骨董が馬鹿に好きなんです。それで買うでしょう。金がないでしょう。それから油絵を画始めるんです。

《お伺い》今どの位致しますので。

《御垂示》家にある一寸大きいので三十五万円ですね。一寸したので二、三十万円ですね。飛ぶ様に売れるんです。どうも、骨董類を好きな芸術家というのはよくあるんですが、兎に角作家で一番好きなのは吉川英治ですが、古い時代から――二、三十年前から集めてますね。それから大仏次郎おさらぎじろう、川端康成、未だちよいちよいありますがね。兎に角ああいった有名になる人はみんな好きです。女では吉屋信子ですね。ああいうのを好きな人は霊が高いという意味もあるし、ああいうのが好きな人は霊が高くなるという意味もありますね。何しろ昔から、ああいうものを好きな人は偉い人になりますね。その内の一番偉いのは秀吉ですが、非常に好きなんですからね。若い時分に戦で掛廻って居た時分から好きで集めていたんですね。

 それから安田靭彦やすだゆきひこ、之は誰でも知っている。評論家阿部賢一。美術研究家榎本明三、之は日比谷公園の「美松」をやっている人ですね。カフエーの大きいのもやっている。之も好きなんですよ。井上恒一、東京の芝にある「晩翠軒」の主人ですが、支那陶器では大したものです。昔から良い物を集めてます。私が気に入った物があって買おうと思っても中々売らないんですよ。之は良い物がありますね。鎌倉芳太郎。日東紡績株式会社長片倉三平、此の人も好きですよ。中々良い物を持ってます。片倉製糸の社長です。産業経済新聞社長前田久吉。之は先に中外新聞社長をやっていた人ですね。繭山まゆやま順吉、之は支那陶器の――私の方に始終来る人ですがね。太田貞造、之も中々有名ですね。佐野隆一。菅原通済つうさい、此人は好きなんですよ。中々買いますね。良いものを持っていますね。

 そんな連中ですがね。未だ細川護立もりたつ、高橋誠一郎、浅野長武ながたけ――みんな入ってますが、名前を出してくれない。そうすると仕事が非常にあるので、暇を割く訳にいかないというので、蔭の会員です。

《お伺い》信者の時に浅野さん丈別に連れて来ても――十五日が日曜日ですので。

《御垂示》それはいいです。けれども十五日はうんと来るから他の日がいいですね。私も会いたいからね。処が日曜は博物館は休みじゃないですよ。月曜ですよ。十五日丈は肝腎な日だからね。其他の日がいいですよ。其次の月曜だっていいですよ。日が延びる程こっちは整頓するからね。

《お伺い》ではそういう風に。

《御垂示》その方がいいですね。二十三日ですね。確か博物館の休みは月曜でしたよ。何だか――美術館が出来かかっていると、普通の話の方は変てこになっちゃったが、何か聞く事はありますか。

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