岡田茂吉 『文明の創造』科学篇「胃病」(昭和二十七年) | 岡田茂吉を学ぶ

『文明の創造』科学篇「胃病」(昭和二十七年)

  茲で肺臓の解説をするのが順序であるが、之は最初に充分かいたから略して、胃に移る事にしたのである。病気の原因が殆んど薬毒である事は、今迄説いた通りであるが、特に胃に関した病気程それが顕著であって、悉(ことごと)く薬で作られるといってもいいのである。それを今詳しくかいてみるが、誰しも偶々食べすぎとか、食靠(もた)れとか、胸焼がする事がよくある。すると放っておけば治るものを、何でも薬さえ服(の)めばいいと思い、早速胃の薬を服んで了う。然し一時はよくなるから、それで済んだと思っていると、何ぞ知らん此一服の薬が、将来命取りの因となる事さえあるのだから問題である。つまり一服の薬が病の種を蒔く訳である。というのは暫く経つと、再び胃の具合が必ず悪くなるもので、そこで又薬を服むという具合に、いつしかそれが癖になって了う。此点麻薬中毒と同様であって、終(つ)いには薬がなくてはおられない事になるが、斯うなるともう駄目だ。立派な胃薬中毒患者である。そこで医者に診て貰うと先ず胃弱、消化不良、胃加答児(かたる)、胃酸過多症などと診断され、斯ういうものを食ってはいけないとか、此薬を服まなければいけない、斯ういう養生をしなさいなどと言われるので、其通り実行するが一時は一寸よいようでも、決して治りはしないばかりか、寧(むし)ろ悪化の傾向さえ辿る事になる。痛み、嘔気、胸焼、食欲減退など種々の症状が次々発るので、仕方がないから薬を服む、と一時よくなるので、薬で治るものと思い込み、益々薬が離せなくなる。処が初め効いた薬が段々効かなくなるもので、それからそれへと種々な薬を変えるが、変えた時だけは一寸良いので、それに頼っていると又駄目になって了うという訳で、言わば胃薬中毒患者になるのである。そんな事をしている内、遂々(とうとう)口から血を吐くようになる。サァー大変と医師に診て貰うと、之は立派な胃潰瘍で、充分養生しないと取返しのつかない事になりますよ、先ず固形物を食べないで、絶対流動食にして安静にする事等々、万事重症患者扱いにされて了う。

  右は、最初からのありふれた経路をかいたのであるが、実は斯ういう人は今日尠(すくな)くないのである。そこで初めからの事をよく考えてみると、初め胃の具合が悪かった時、放っておけば直(じき)に治って了ったものを、何しろ医学迷信に陥っている現代人は、薬を服まないと治らない、放っておくと段々悪くなると心配し、一刻も早く医師に罹(かか)ったり、売薬などを用いたりする。そんな訳で全く薬によって重症胃病を作り上げて了う訳である。何と恐るべくして又愚な話ではないか。処がそれは斯うである。大体胃の薬というものは、勿論消化促進剤であり、消化剤は必ず重曹が土台となっている。衆知の如く重曹は物を柔かくする力があるので、煮物などによく使われるが其理屈で常住消化薬を服むとすると、食物ばかりではない、胃壁をも段々柔かにして了う。そうなった時偶々固形物などを食うと、ブヨブヨになった胃壁の粘摸に触れるから疵(きず)がつく、其疵から血液が漏れるのである。吐血の際鮮血色は新しい血で、破れた局所が大きい程多量に流出するのである。処が人により珈琲色の液体や、それに黒い粒が見える事もあるが、之は古くなって変色した血で、粒とは血の固りである。又よく大便に黒い血の固まりが交る事があるが、之は古い血で疵口から出た血液が胃底に溜り、固まったものが溶けて出たものである。然し此珈琲色の古血を吐く場合、非常に量の多いもので、一度に一升から二升位、毎日のように吐く患者さえあるが斯うなっても吾々の方では割合治りいいものとしている。然し此病気は医学の方では仲々治り難いとされているが、全く原因が薬であってみれば、お医者としたら具合が悪いに違いない。何しろ薬を廃(や)めなければ治らない病気であるからで、従って此病気は薬を廃めて気長にすれば、必ずと言いたい程治るもので、其方法は最初血液を少しでも見る内は流動食にし、見えなくなるに従い、漸次普通食にすればいいのである。次に他の胃に関した病をかいてみよう。

  最も多くあるのは胃アトニー(胃酸過多症)という症状で、之は文字通り酸の多い病であるが、酸とは勿論薬の変化したものであるから、薬を廃めれば順調に治るのである。次は胃痛で、此酷いのが胃痙攣である。之は激しい痛みで堪えられない程である。医療はモヒ性薬剤を用いるが、之は一時的麻痺によって、苦痛を抑えるだけであるから、日ならずして又発(おこ)る。という訳で癖になり易いもので、此病の原因も勿論薬毒であるが、其経路をかいてみよう。

  先ず、薬を服むと一旦胃に入るや、曩(さき)に述べた如く、薬は処理されないので、胃に停滞する。人間は仰臥(ぎょうが)するから薬は胃を浸透して下降し背部に固まる。それが浄化によって溶け胃に還元するが、其時は最早毒素に変化しているから、胃はそれを外部へ排泄しようとする。其刺激が激痛であるから、胃痙攣の起った場合、何にもしないで一度我慢して、痛いのを通り越して了えば下痢となって毒素は出て了うので根本的に治るが、毒素が出切る迄には何回も発るが、之は致し方ない。然し其次発った時は、必ず前より軽く済み、次は又軽くなり遂に全治するのである。

 次に胃癌であるが、之には擬似と真症とあるが、実際上擬似の方がズット多いものである。そうして真症の胃癌は霊的であり、宗教的になるから、茲では擬似胃癌のみに就て説明するが、勿論之は薬毒が原因で、前述の如く一旦背部に固結し、胃に還元した際、医療は排泄を止める結果再固結する。之は普通の固結よりも悪性である。何故なれば毒素に変化したものが、再び固まるからで、之が即ち癌である。然し之は薬の性質にもよるので、どの薬もそうであるとは言えない。之も放任しておいても長くは掛るが、必ず治るものである。

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