救世の警鐘(栄光165号 昭和27年7月16日)

 凡ゆる病気の原因は薬であるという事は、私は常に唱えている処であるが、それを知らない一般は、病気にかかるや、薬で治るものと絶対信じており、良い薬さえ発見すれば治るものとして、各国の専門家は其研究に没頭し、新薬を発見しようとして懸命になっている。処が其様に薬剤万能時代である今日、私の説は薬で病気が治る処か、反って病気が作られるというのであるから驚く外はなかろうが、しかし之が真理である以上、先ず白紙になってこの文を読んで貰いたいのである。

 右の如く薬剤によって病気が作られ、而もそれを治そうとする薬が拍車をかけるとしたら、之程重大問題はあるまい。かさねていうが病気に罹るや必ず薬を用いて、一時的ではあるが苦痛が緩和するので、それを治る過程と誤認して、今日の医学が出来たのであるから、この事を知って何等先入観念に捉わるる事なく、病人は現在及び既往の経過を考えて見ればよく分るであろう。今一つ云いたい事は、薬害はひとり病ばかりではない。一切の不幸の原因となる事実である。たとえばこの間自殺した作家林房雄氏夫人繁子さんにしても、自殺の原因は夫君の婦人関係もあったようだが、主なる原因は神経衰弱の昂進こうしんという事である。この神経衰弱という奴もヤハリ薬毒が主因である。何よりも同夫人は睡眠薬が効かなくなる位、重症不眠症になっていたという事であるから、余程ひどい睡眠薬中毒に罹っていたのである。又入院をも非常に嫌ったそうだが、之なども前の入院の経験で病院では強い薬を用いる為、其苦痛に懲りたからであろう。この様に薬害の余波は幾多の悲劇を作っている。

 以上によって分ったであろうが、人間の苦悩なるものの殆んどは薬毒が原因であって、早い話が彼の感冒の苦痛にしろ、其他の病気による痛み、かゆみ、不快感等も原因はことごく薬であるから、しこの世界から薬がなくなったとしたら、病苦は消滅すると共に、不幸の大半も消滅するのは勿論である。そうなってこそ社会は平和明朗となり、憎しみも争いもなくなり、戦争の脅威さえも解決さるるので、ここに初めて人類待望の安心立命あんしんりつめいの世界が生れるのである。

 この様な社会になったなら、人間は健康で安心して働けるから、貧乏もなく、心も豊かに生活を楽しむようになり、其結果病院も、製薬業も、医師も、看護婦も、病気に附随する一切の職業は不必要となるから、社会全体のプラスたるや予想もつかない大きなものがあろう。其上思想も健全になる以上、犯罪は激減し、警察、裁判所、監獄等の不快なものもなくなり、農業方面も薬害を知って用いないから虫害もなく、金肥人肥も全廃され、農作物の収穫は何倍に増えるか分らない程で、ここに鼓腹撃壌の時代となり、名実共に地上天国となるのは勿論である。

 以上は薬害を赤裸々にかいたのであるが、この様に恐るべき薬の害を、何千年もの間人類は気が付かなかったという事は、実に不可思議である。全く時の来らなかった為で、それが愈々私によって発見されたのであるから、この事が人類全般に知れ亘るに於て、其歓喜たるや如何に素晴しいかである。即ち文化の一大転機であり、空前の大奇蹟である。之こそ病貧争絶無の地上天国が近づいた事の何よりの証拠であって、それにはまず薬害を知らせる事こそ根本であるから、この文を警鐘としてここに発表するのである。

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