台風や大雨が来るたびに、農家は不安を抱えます。茎が折れる、稲が倒れる、冠水して腐ってしまう――こうした被害は毎年繰り返され、国も農家も対策に多くのお金と労力をかけてきました。しかし被害はなかなか減りません。
ところが、嵐のあとに周囲の田んぼが大きな被害を受けているのに、ほとんど傷ついていない田んぼが存在することがあります。見ていた人たちは「なぜだろう」と不思議に思うばかりでした。
答えは土の中にあった
岡田茂吉は、その違いの原因を根に見出しました。
化学肥料を使わない自然農法で育てた作物は、肥料を使った田んぼの稲と比べて、細い根の数が非常に多く、しかも長いのです。この密で強靭な根が、地中にしっかりと張ることで、嵐の中でも茎が折れにくくなります。水が増えて田んぼが冠水しても、引いたあとに稲が腐ることがありません。
岡田はこれを、人間の健康にたとえました。毒のない新鮮な食べものを毎日食べている人が丈夫でいられるのと同じように、清らかな土で育った作物は、それ自体が強くなる、と。
小さな姿に隠れた豊かさ
自然農法の稲は、背が低く、葉も小さめです。それを見て「育ちが悪いのではないか」と心配する農家もいます。ところが実際には、実のつきがよく、収穫量が多いのです。
なぜかといえば、化学肥料を使うと、植物の栄養が葉のほうに集中してしまい、肝心の実に届きにくくなるからです。自然農法では、葉が必要以上に伸びず、その分のエネルギーが実に注がれます。
実際に記録された驚くべき例として、自然農法でとれた一粒の種が150本もの分げつ(茎の分かれ)を生み出し、粒の数が約1万5千にのぼったことがあったといいます。また自然農法の稲からとれる稲わらは、非常に丈夫で、細工にも向いているとされています。
岡田茂吉が伝えたかったこと
岡田がこの文章で描こうとしたのは、台風対策や防災の話ではありませんでした。土が本来の力を発揮できる環境を整えることで、作物がおのずと強くなる――その見えない仕組みを、具体的な事実をもとに伝えようとしたのです。
この文章の原文(昭和26年1月15日付)は、以下のページで読むことができます。
→ 風水害(自然農法解説)


