岡田茂吉 『文明の創造』科学篇「人形医学」(昭和二十七年)  | 岡田茂吉を学ぶ

『文明の創造』科学篇「人形医学」(昭和二十七年) 

 私は、今迄現代医学に於ける、凡(あら)ゆる誤謬(ごびゅう)の点を指摘して来たが、茲で最も重要なる点は、人間をして人形扱いにしている事である。というのは医学には種々の科目がある。内科、外科、脳神経科、泌尿器科、皮膚科、婦人科、小児科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科というように、それぞれ専門部門に分れている。又右の科目中、内科にしても結核、胃腸病、心臓病等、夫々(それぞれ)専門的に分れている。そうかと思うと、基礎医学と称し、学問的研究にのみ一生涯没頭している人もある。彼のモルモットや二十日鼠(はつかねずみ)を相手に、毎日顕微鏡と首っ引きで余念がない。世間よくモルモット博士などと言われているのは誰も知る処で、其他臨床専門で、読んで字の如く、直接病人の脈を年中とっている人もある。又予防医学といって主に伝染病予防をはじめ、社会衛生、個人衛生等に専念している人もある。次に療法に於ても色々の種類がある。薬剤の服用注射は固(もと)より、手術、電気、マッサージの外、光線療法、物理療法、精神療法等々があるかと思えば、皇漢医術あり、各種の民間療法あり、禁厭(まじない)、祈祷(きとう)宗教による事もある。ザット数えただけでも右の通りであるから、実に複雑多岐種類の多い事驚く程である。此様になった原因は、全く本当に治るものがなかったからで、若(も)し真に治る療法があったとしたら、それ一つで解決がついている筈である。

  そうして医学の最も間違っている点は、人体を人形と同様に見る事である。というのは、抑々人体なるものは、一個の綜合体であって四肢五体バラバラのものを、繋ぎ合せて作られたものではない。従って一部分に病気が発(おこ)るという事は、其部分だけではなく、各部分に関連があるのである。例えば手足が悪いという事は、手足だけが悪いのではなく、手足以外の他の部分即ち甲の部分に原因があり、それが乙に移り、又丙に表われるというように何処迄も連繋している。仮に歯が弱いという事は、全身が弱いからで、全身が弱いまま歯だけ丈夫にする事は絶対不可能である。女性の結核患者が病気が進むと、必ず無月経となるが、之も結核による貧血の為であり、腸が弱い人は必ず胃が弱く、胃の弱い人は肺が弱く、肺の弱い人は心臓が弱いというようにどこ迄も相互関係である。一番判り易い例は仮に人間を一国家としてみても判る。其国家の政府の政策が悪ければ、国民全般が悪影響を受けると同様、人体の中央政府である心臓が悪いとしたら、身体全部が悪くなる。国家が不景気、金詰り、物質不足などというのは人体なれば栄養不足で貧血状態という訳である。そうして単なる痛みと雖(いえど)も、それが頭脳を刺戟(しげき)し、心臓に影響するから、胃にも影響し、食欲不振となり、腸が弱り、便秘、疲労等、全身的に影響を及ぼすのである。又肺炎に罹(かか)るや、若し肺のみの病気とすれば、肺だけの熱で、他に影響はない筈(はず)だが、実際は其熱の為全身的に苦痛が及ぶにみても明かである。

  次に数種の実例をかいてみよう。

(一)二十歳位の女性 右の歯が非常に痛むので浄霊した処、間もなく痛みは止まったが、翌日又痛いと言って来た。普通の歯の痛みなら一回で治る筈だが、まだ治らないのは他に原因があると思って、歯の下部から順次下方ヘ向って押してみると、胸部に固結があり痛いというので、其固結を溶かすと直ぐに治ったが、翌日又来てまだ痛いという。私は不思議に思って、尚下部へ向って段々押してゆくと、盲腸部が非常に痛いというので、そこを浄霊した処、それですっかり治ったので、訊いてみると、以前盲腸を手術したという。それで判った事は、其時の消毒薬が固結し、浄化が起ってそれが胸部を通って歯茎から排泄しようとした其痛みであった。之にみても歯痛の原因が盲腸部であったという事は、実に想像もつかないのである。

(二)二十幾歳の男子 結核三期で咳と痰が非常に出るので、いつもの通り頭、首、肩等を浄霊したが、余り効果がないのでよく査(しら)べた処、意外にも両股、鼠蹊部にグリグリがあって、そこが可成(かなり)の発熱があり、押すと非常に痛いという、ハハァー之だなと思って、其処(そこ)を浄霊した処、一ヶ月位で全治したのである。その時私は「君の肺は股に付いていたんだね」と言って笑ったのである。処がそれに就て面白い事があった。有名な某医学博士に此話をした処、首を傾けているので「じゃー試しに貴方の股を診てあげましょう」と言って抑臥(ぎょうが)させ、押した処小さいグリグリがあり、微熱もあるので浄霊するや忽(たちま)ち咳と痰が出たので、唖然として不思議の一語より出なかった。某医博は今でも某大学の教授をしている。

(三)中年の男子 胆石病で苦しんでいたので右背面腎臓を見ると、大きな固結があるので之だなと思って、数回に亘って溶した処、それで治って了(しま)った。

(四)脱肛や痔核で苦しんでいる人の股をみると、必ずグリグリがある、それを溶かすと治るので、原因は股にある事を知ったのである。処が痔出血や赤痢の原因は、頭部の毒結が溶解下降する為であるから、何よりも頭部を浄霊すれば治ると共に、出血後は頭部が軽快になるのでよく判る。

(五) 頭痛、頭重や精神集中力が乏しい人は、左右何れかの頸部淋巴腺又は延髄部に必ずグリグリがあって、そこに発熱がある。それを溶かすと直(じき)に治る。

(六) 眼の悪い人は、延髄部を主に頸部(けいぶ)から肩にかけて固結があり、又前頭部に必ず発熱がある。そこを浄霊すると軽い眼ならそれで治る。私は手術をしない眼ならば、大抵は治るというが、今日迄盲目を幾人となく全治さしたからである。近眼及び乱視など延髄部の固結を溶かせば、百発百中治る。

(七) 盲腸炎は、右側腎臓部に必ず固結がありそこを浄霊すれば治る。又胃でも腸でも、原因は背部にあるから、そこを浄霊するだけでよく治る。胃痙攣など激痛の際、前方から浄霊しても痛みは全部取れないが、背部を浄霊すれば全治するのである。

(八) 最も面白いのは瘭疽(ひょうそ)である。患部だけ浄霊しても全然痛みは除(と)れないが、頸部をみると必ず固結があるから、そこを浄霊すると実によく治る。

 以上によってみても判る如く、病なるものは表面に表われた症状であって、其因が意外な処にあるものである。それを知らない医学は、症状さえ治せば病気は治るものと解釈しているので、真の医術ではないのである。それは全く人間は綜合体であるという事の認識がないからである。何よりも病気によって療法が異い、薬の種類も数多いという事は、よくそれを物語っている。本当に治る医学とすれば、一つの方法で万病を治し得る筈である。元来病気とは曩に説いた如く一種類となった毒素が各局部に固結するので、言わば病気の種類とは固結場所の種類である。それが分るとしたら療法も一つとなり、進歩の必要もない事になる。何故なれば進歩とは不完全なものを完全にしようとする過程であるからである。此一事だけにみても、現代医学は如何に根本に未知であるかが判るであろう。此意味に於て、今迄進歩と思って来たのは、実は外面だけのそれであって、肝腎な病気は治らず、一つ所を往(い)ったり来たりしていたに過ぎないのである。

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