天地創造記 (世界救世教早わかり昭和二十五年十一月二十日)*再掲

 茲で、地球の出来た頃からの事をかいてみるが、抑々(ソモソモ)造物主という得体の知れない不思議な親方が、宇宙の中間に頑張っていたらしい。そこでどういう積りか知れないが、其親方は日月星辰や、地球なんていう妙な物を拵(こしら)えたんだ。それで最初の内は、地球も出来立てのホヤホヤであったから、泥海のようにブヨブヨしていたんだ。それが段々固まるにつれて、土と水と分れ分れになったのが、今日の陸と海なんだ。処で陸の方はまだ軟かいので、親方は之じゃ駄目だと、恐龍とかマンモスとかいう、恐ろしく大(で)っかい怪物のような生物を造って、其奴等に陸地の上をドタリドタリ駈けさせて、そうして固めさせたというんだから、如何に大仕掛な土木工事であったかは、虫ケラ同然の人間なんかには想像もつくまい。それでいゝ加減固まった頃、お前等はもう用はないと言ってお払ひ箱にされた。之が自然淘汰(とうた)というものなんだ。今でも方々から恐龍の骨や、マンモスの骨が見つかるんだから決して嘘ではない。そうしておいて親方は又いろんなものを作った。虫ケラや鳥や恐ろしい猛獣や、気味の悪い大蛇は固より、木や草、石や金などを拵えて、すっかり仕度が出来上ったんで、最後に人間共を作ったという事なんだ。

 其時分だから、人間も裸で生れて来たには違いないが、何しろ人間は毛が生えてないから、寒くて仕方がない。そこで初めは木の葉や草の葉で、着物らしいものを作って間に合していたが、段々利巧になって麻や木綿で着物を拵えたり、家を建てたりするようになったが、猛獣や大蛇が沢山いて、始終人間を喰い殺しに来るので、危くて仕方がない。そこで人間も色々な武器を作って戦ったんだ。こんな訳で武器も巧妙になるというように、人間も大分小賢しくなったのは勿論だ。それでやっと恐しい獣物共を大方退治して了ったんだ。之も自然淘汰という奴だよ、之でヤレ安心と思うと左にあらず、今度は人間の中に欲張り野郎が出来て、大きな土地を欲しがったり、色々な物を取りたがったり、女を手に入れようとしたりして遂々人間同志の闘いが始まったんだから、人間位浅間しい代物はあるまい。それで何奴(ドイツ)も此奴(コイツ)も勝とう勝とうとして、人殺機械を段々進歩さして、遂々原子爆弾という一ぺんに何百万の人間をやっつけてしまうという飛んでもない代物が出来て了ったんで、世界中の人間共は、度胆を抜かれて、目を白黒しているのが今の有様だ。

 処が、親方はこれでもうよしと思ったらしい。何しろ人間共の命の取り合いは、もう此位で止めないと危ないと仰せられた。何故なれば、之以上進歩すると、折角之までに出来た世界は元の木阿彌になるからだ。もう此位立派になった世界だから、愈々儂(わし)が最初から計画しておいたミロクの世を拵えてやろう。そこで又親方は声を秘めて斯うも言われた。実は今迄戦争が必要だから放っておいたんだよ。それは戦争をさせなければ文化の進歩は、早く出来なかったからだよ、処がもう戦争は必要がなくなったから、絶対廃止にしたんだ。之もヤッパリ戦争の自然淘汰なんだと仰言るんだから、何と有難いでは御座らぬか。

 親方は又斯う仰言る。戦争を淘汰したから愈々之から地上天国、ミロクの世の建造に取り掛かるんだよ、之は今迄儂は色々なものを用意していたが、漸く揃ったんで、今度メシヤの親父に命令したんだよ、だから之を知った善人共はみんな嬉しがって、手の舞い足の踏み処がないだろう。それをみるのが儂はどんなに楽しいか分らないのだよ、昔キリストや釈迦にも、斯ういう世の中が来る事を一寸言わしておいたから、人間共は判っている筈だ。判らなかったり、本当にしなかったりした奴は、了見方が悪いからで、今更悔んで泣きついたとておっゝかないよ、と仰言るだろう、万事はメシヤの親父に委してあるからよく親父から聞いて、其通りにすれば、倖せな世の中になる事請合だよ、どうだ相判ったか。と仰言って雲に乗り、天に向ってお帰りになったんで御座る。

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