光明台
それから話は飛ぶけれども、神仙郷と言うのは地上天国の模型ですね。そう言う目的で造ったものなんです。本当言うと本山がなくちゃならない。で、本山を造るべく、ケーブルを越えて半町許り行くと、左手にツツジを沢山植えてある所がありますが、あそこが約一万坪あるんです。之は前に――三、四年前に手に入れてあった所ですがね。大体その積りで買ったんですがね。その時分は非常に安かった。そこはホーロクを伏せた様な、実に穏かな良い山なんです。その両方に谷川みたいになっている。そこのまわりが流れているんです。その後の方が杉林ですね。そこに白亜の殿堂ですね。そうすると実に美観が、何んとも言えないですね。青い森の前に、白い家ですからね。で、その建築は熱海の今度のメシヤ会館とは丸で違う様式ですがね。私は何かやるのに、早い内から、頭に出来ちゃうんですね。だから本当に間怠っこい様ですが、その代わり見当は良くつくんです。でその殿堂は一万人入る積りです。全部椅子にして一万と言うんですから、之は未だ日本にはないですよ。日本で一番多く入るのは、浅草の国際劇場と言うのがありますが、あそこが五千人ですから一万人と言うのは全然ないんです。そうして周囲の平地ですね。それも非常に広いですから、全部で二万や三万は充分入る積りです。そうしてその辺も、唯殿堂を建てる許りでなく、地形が具合が良いので、別な――庭園式にしますがね。丁度地形も実に具合が良く、前の方がずっと低くなっていてそこは去年五千坪許り手に入ったので、其処には宿舎を作る積りです。之は、宿屋に泊らなくても良い様に、各県別とか会別にして、何軒も作る訳です。之は天理教でやっていますが、やっぱりそれを真似した訳ですね。そんな具合で、本当の本山が出来る訳です。
で、名前は「光明台」とつけましたからね。その光明台のそこが、丁度東と西の間ですね――箱根の山の上になる。要するに東と西と言うのは、経と緯なんですからね。東が経で西が緯なんです。東が火で、西が水なんです。ですから経緯結びの中心ですね。それが箱根になってますからね。つまり霊的に言えば、世界の真ん中に光明が現われたと言う事になるんですね。
それで、そこに行くには、ケーブルを越えなければならないですがね。今の処は、道がないですね。線路を越さなければならないので、危なくてしょうがない。自動車はとても行きませんしね。そこで、今の公園と旅館の倉田の間の道ですね。丁度、埋めようと言う所辺りから、地所を下げて――往来を下げて、ケーブルの下にトンネルを作ろうと思っている。之から始めますがね。あそこを調べると、トンネルは訳なく出来るんです。ケーブルの所は土が高くなっていますからね。で、割合に――私はもっと大袈裟だと思っていたら、良く聞いて見ると、ケーブルからは土は四尺あれば良いんですね。すると、あとはトンネルが出来る。鉄筋の柱をやって、セメントをやれば、もう出来る。だから、今度はトンネルを、トラツクでもバスでも訳なく通れる様になる。その出た土を、今の自動車置場に埋め様と思う。一石二鳥なんですね。まあ、時節に応じて色々そう言った工夫が出て来るんですがね。それは神様がちゃんと用意してありますからね。実に、地形なんかも旨くいくんですよ。そうして強羅の公園ですが、あの通り汚なくて、公園でないとは言えませんよね――ちゃんと公園になっているんだからね。実にボロ公園で、しょうがないから、あれも私の方で拵えてやろうと思う。もっと、純西洋式に、つまりガーデン式にね。つまり神仙郷が岩だらけの、どっちかと言うと日本式の様な支那式の様なので、そこで公園の方は純西洋式にやろうと思っている。あれはもっと地所が広くなるんですよ。片っ方の――私が埋め様と言う所は、丸で薮になってますからね。そこをすると広くなります。そうして出来る丈色々な花を植えて、丁度噴水が中々立派ですからね。今の処は開店休業と言う様子です。水は出ますがね。最初は綺麗だったんですよ。あそこいらをすっかり整理して、そして箱根は気候が寒いですから、どんな花でもといかないが、あそこに適した物を大いに植えて、美観を呈し様と思う。そうして美術館に行った人が、どうしても――混む時は一時間以上待ちますから、その間公園を散歩すると言う様に、こっちで役に立て様と思う。で公園も教団で利用するのと、会社でもそこの旅館でも、大変に良いですよ。それは旅客が一寸散歩しようとしても、今では何んにも見る所がないんですからね。今度は美術館が出来ると大変な魅力になりますね。それこそ旅館が援助しても良い位です。そんな様な具合で、外人なんか非常に喜ぶだろうと思ってます。公園をこっちで本当にやると素晴しいものになりますよ。中々地形なんかも面白いですからね。そうして、私は公園に面した方の、茶席の広い所ですね。そこをすっかり整理して――この間も行って見ましたが、方々出来ました。土は少し斜面になって、出来る丈岩を少なくして、土許りにしようと思う。それにモミジを植える。この間行ったら三百本買ったそうですがね。成可く大きい、枝の下に張ったものを択れと言って来ました。そうして、みんな紅葉するのと、しないのがありますから、紅葉するのを集める様にと言って置きましたがね。そこで、秋は真っ赤になる訳ですね。そうして下の土は真っ青にしようと思う。それには青苔が良いですからね。去年京都の苔寺に行った時、ははあ之は面白いな、こっちも何処かにやって見ようと思ったんですが、丁度モミジの所は良いんです。苔寺の方は三十幾種類あると威張ってましたが、なに、もっと種類を多くしようと思っている。で、信者さんの中で、自分の所に――庭にあるとか、近くにあるとか言う苔を採集して持って来て貰いたいと思うんです。それはまだ、今じゃないんですから、早くて入梅あたりか――多分その頃だろうと思いますがね。それは持てる丈で良いですからね。みんな其の土地の苔を持って来て貰う。それで、全部私が拵え様と思う。之は、苔の種類が多いのでは日本一で、それは植物学の評判になりますよ。苔を研究するなら箱根のあそこに限るとね。そうすると、紅葉と苔との対照が非常に良いと思う。で、今の宿舎の所から太鼓橋の様な物を掛けてね。今橋の形なんかも考えてます。調和する様な旨い物を拵え様と思っている。それから流れを、美術館の横手の方に上って行く、穏やかな流れにして、両側にモミジを植え様と思っている。それからあの辺一体秋の感じが、大いに出る積りです。で、萩の道も、もっと延長しましたからね。萩の道もずっと良くなる。萩とモミジですね。そうして大いに秋の感じを出そうと思ってますがね。
熱海
箱根はその位にして、熱海の方は、今どなたでも皆見ているでしょうが、ツツジ山ですね。あれは大体出来ましたがね。あれも最初ツツジを二千本植える積りだった処が、二千本じゃとても足りない。あそこに取ってあったのが六百本あったが、それでも未だ未だ足りない。それで今度は千本買いました。三千六百本ですね。やっぱりミロクですね。箱根のツツジも三百六十本。こっちが三千六百本。それから梅が結局三百六十本になります。やっぱりミロクにどうしてもなっちゃうんですね。だから、三千六百本一山に植えると言うから、到底日本の何処にもないに決まっているからね。あれは将来日本の名物になって、一ぺんは日本中の人が必ず見に来ますですね。それからメシヤ会館ですが、会館もこの間技師が図面を持って来ました。どうも気に入らないのです。どうもああ言う人達は、之(鼻)がありますからね。だから、こっちが言っても、その通りに、中々やらないです。やっぱり自分の個性を出そうとする。その人は芸術院の建築の方の受賞者になった吉田五十八と言う人です。兎に角あの人は美術学校の教授で、今度の美術賞を貰う位ですから、設計家としては日本一ですが、けれどもこの人は日本建築を研究しているんです。その点に私と一寸喰違う。私はずっと新しい処を狙ってますからね。外国よりか新しいものを狙っている。だから喰違う。でもあの人は新しい方です。日本の新人でね。歌舞伎をやっている位ですからね。私の方が異っているので、先の方が異って来るんですね。私はどうも解らないから、先生一つ画いて下さいと言うのでよろしいと言って、今度図の専門の者を呼んですっかり命じましたからね。お気に入る迄何回でもやりますからと言うので、今度は気に入ったものが出来ますがね。そうしたら見せます。之は、相当良いと思うんです。で、メシヤ会館は大分広くなったので、結局椅子席が二千人は出来ます。それから廻りの廊下に立ったのが千人位出来ますから、三千人位は大丈夫収容出来ますね。それより多くなったら、外の廻廊が六尺幅で、ずっとコンクリートになりますから、そこにも相当立てますから、何んだ彼んだと五千人位は収容出来ますね。その代わり、外に廂を作らなければならない。屋根がなくちゃいけない。そこで硝子の廂でずっと取りまく――四十何間の硝子の廂が出来る。然し今硝子は非常に進歩してますから。間数の長いのは平気ですよ。どの位でやれますか――兎に角長さ三十間迄やれるんですからね。新しい硝子の設備は最近出来たんです。網硝子ですがね。玄関は三間四方位の天井にする積りです。硝子の廂でね。色々の点は――中々難かしい点なんです。そう言うのは今迄誰もやった事がないんですからね。宗教建築じゃないからね。耶蘇教式――キリスト教式の物をやるなら、今迄出来ているから訳ないんですがね。こっちは余興もやらなければならないから、舞台の設備もやらなければならない。舞台と言うのは娯楽で、拝むと言うのは宗教ですから中々苦労が要るんです。外郭も、今の吉田と言う人のは、丁度今の――現代人の感覚なんです。私の方はもっと先ですからね。先方のは、幾らか劇場的気分があるんです。私の事を言うと、私のは銀行式になっちゃうと言うんです。そんな様な具合で、銀行式とか官庁式とか映画館式と言う、それを避けなければならないので、外郭が難しいと言うんですがね。それもちゃんといく積りです。それから展望台なんか、色々お話がありますが、之はこの次にして。