御教え *ピカソ展(御教え集4号昭和26年11月25日⑤)

【御教え】この間、東京に行った処が、「ピカソ展」を高島屋でやっていると言うので――わざわざ、見に行くつもりもなかったが、そう言う話なので、ついでなので見に行ったが、その批評をここに書いてある。この間、マチスは――話だけだったか、これは、恐らく私の様な見方をした者はないだろうと思いますね。

(御論文「ピカソ展を観て」のあとの御教え)

 今読んだ通りですね。マチスにしろピカソにしろ、皆んな一遍は見なくてはいけないと言う訳で、ヤンヤと押しかけて、あれで相当入場料を取るんだから、デパートなんか儲けたろうと思いますがね。そんな事は、どっちでも良いが――あれを観ても、解る人はありっこないんです。私が解らないんだからね。それが、ああして大騒ぎをされていると言うのは、批判力がないからです。人が良いと言うから良いと言うので、なぜ世界的名声を博したかと言うと、こう言う訳です。アメリカの富豪が美術館を造ったり、自分の家に並べたいと思っても、東洋美術は殆んどないんですよ。だから近頃、アメリカ人なんかでも、随分熱心に、買おうと思って、代わる代わる来てますがね。しかし、本当に良いものは中々買えない。また日本人は売らない様にしてますからね。そう言う点は、日本人は国家思想が強くある。そこで一等品――一級品は手に入らない。それから志那の方も、以前はあったけれども、イギリスの富豪――デイビットとかホップレスとか言う金持ちが、殆んど買っちゃった。アメリカでも、ボストンの博物館あたりが、前から買っちゃってある。それで、アメリカの金持ちが手に入れる事ができない。そこで、ヨーロツパの絵ですね。ああ言うのも――同じ白人ですからね。そこで目を着けたのが、新しい――生きている人で、見渡した所フランスあたりが、一番偉い画家がいる。それでその絵に目を着けた。マチス、ピカソだとかね。ああいった人達が――段々世の中の絵の傾向が変わって来て、後期印象派だとか立体派、後世派だとかでてきて、新しく何か画いていった。で、その結果遂々行過ぎちゃった。その親玉がピカソですよ。ちょうどブランコと同じで、こっちに来ているのに、今あっちの端にいるのがピカソですね。そうすると、アメリカの富豪が変わっている処――変わっている為に、他の金持ちが持っている絵と違いますからね。他の金持ちが持っている絵は旧式だ。駄目だ。こっちが新しいものだ。素晴らしいものだと思っちゃった。しかしアメリカの富豪だって目が利かないんです。美術眼なんかない。すると、他の富豪が、あいつがああ言う物を持っていると言うので、段々せり合っていった。今一番高いですね。だから、ピカソの絵は、あんなに高いから良い物に違いないとなった。それが、日本に来て、フランスやアメリカで大騒ぎをやっているから、世界的の大名人だ。見ずんばある可からず。と言う様になった。要するに、そう言う様に拵え上げちゃったんですね。私は本当の白紙になって、冷静に批判したんです。見ると、何もないんです。絵としては、ただ人を驚かす様な――ただ、奇ですね。奇によってアッと言わせると言うんです。あれが絵としてやられたら堪らないですよ。一番良いのは――あの絵を飾って見て御覧なさい。ああ良いと思う人は、恐らくないですね。ちょうど、銀座通りあたりに行って、若い女が歩いてます――毒々しい化粧をして、派手な衣装をしている――派手なかっこうをしていると、皆んな見るでしょう。美人じゃないんですがね。見るだけは見ますよ。有名になった音楽家とかは、はああ偉いんだなと思う。だから、そんなものはある時期が過ぎると、ガタッと落っこちます。ピカソを私の様に見る人や、言う人は恐らくないですよ。しかし、それが本当なんだから仕方がないですね。まあ、これが他の事にも共通しているんですよ。今、大学教授の――良い博士と言う――お医者さんですね。大変な腕前を持っていて、大抵な病気は治してしまうと、思いますよね。処が、本当の値打ちは、我々の方では分かってますからね。それとちょうど同じ様なものですね。この間なんか、ユナイテッドのニュース映画ですが、英国の皇帝が手術をするので、有名な博士が自動車に乗って、降りる処が写ってましたが、丸で神様の様に扱われてましたね。皇帝の手術をするんですからね。我々から見ると、からっきし問題にならないがね。ちょうど、ピカソの絵もそんな様なものだろうと思いますね。

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