寄生虫問題 (自然農法解説 昭和二十六年一月十五日)

 人も知るごとく寄生虫問題は、今日非常に喧(やかま)しく言われている。何しろ回虫保有者が日本人中、80パーセント以上というのだから実に重大問題である。回虫保有者が余りに多い為、反って世人はあまり関心を有(も)たないが、実際上回虫によって死亡する者も、近来少なくないという事である。普通回虫といえば数匹にすぎないが、人によっては数十匹乃至数百匹に上るものさえある。こうなるとちょうど饂飩(うどん)玉のようになっていて、内臓器官へ迄食い込んでゆくが、そうなると種々の苦痛が発する。しかも人によってはその苦痛たるや、実に堪えられないものがある。この原因は無論糞尿肥料によって、医学でも唱えるごとく回虫の卵が、野菜から人間の口を通じて胃に入り繁殖するのである。処がその他の蟯虫、十二指腸虫、疥癬虫、水虫等々何れも小虫の繁殖によるのであるが、医学では未だ病原不明とされているが、私の研究によれば、実は人為肥料の為で、直接の原因ではないが、人肥によって血液が濁るから小虫が湧くのである。この点パスツールの伝染説の誤れる事は、私は以前記(か)いた事がある。大体、人体に虫が湧くなどとは道理に合わないのである。なるほど、死人ならとにかく、生きている人間に虫が湧くなどとは、不合理も甚(はなはだ)しいと言わねばならない。それは全く人間が天理に外れているからで、体内へ入れるべからざる不潔なものを入れ、血液を濁すからである。この意味において、人間は新鮮な空気を吸い、清浄な水を飲み、不純物のない土から生じたものを食し且(かつ)薬剤のごとき異物を成可(なるべく)用いないようにすれば、無病息災たる事は勿論で、寿齢も百歳以上は決して不可能ではないのである。

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