熱海の天国化  (光14号昭和24年6月25日)

昭和24年5月28日静岡新聞に左の如き記事が掲載されていた。

【共同】戦後はじめての観光団として去月29日G・ゴードン号で来訪したハワイの一世、二世は東は日光から西は阿蘇別府など、21日間のスケジュールを無事終り、さる20日からはそれぞれ思出懐しい故郷で七月二日帰国までの一ヶ月余りを送っているが、彼等の眼に今度の観光旅行はどんな風に映ったか?  団長重永茂夫氏や交通公社係員の意見をまとめてみた。

◇非常によかった観光地-首都東京は別として日光、宇治、山田、二見、京都、とくに東西本願寺は信者が多かっただけに好評、別府は温泉でゆったりしていて好適だった。

◇今後のスケジュールから省いてもよい観光地-熱海で、温泉地としてもっと静かなところがよい、博多、熊本は出身者が多い場合を除いて観光地としての価値はない、阿蘇はキラウェア火山(ハワイ)を見馴れた人にとっては珍らしくない。

◇今後のスケジュールに加えたいところ-瀬戸内海、静かな伊豆の温泉。

◇旅館のサービス設備について-一世は純日本旅館、二世はホテルを絶対に好むが、とくに食事については徹底的な日本食で少しでも洋食がかったものは敬遠された。

◇サービスが非常に遅い-旅館によっては従業員の訓練がなっていない、一世の老人でも便所は必ず洋式を好む、温泉は男女混浴は嫌われる。

以上の記事を読んでみるとまったくその通りで一言の否を唱うる事は出来ない、まったく熱海ほど風光明媚なる景勝地を占めながら、それを活かす事を怠っているという事は、着眼点の余りに低かったためであろう、低俗なる営業政策に安心しただ金さえ儲かればいいという浅薄な考え方は、時代の推移に眼をおおうているとしか想われない。

 随而したがって、熱海を今日の儘にしておく限り、折角日本有数の景勝地に恵まれながら外客から見放されるようなことにならないとは限るまい、故にどうしても今後の熱海としては旧来の如き温泉場根性を一擲いってきし、新時代に即した新しい営業法に改めるべきで、国策上から言っても外客誘致の重責を果さなくてはならない、即ち日本の熱海ではなく、世界の熱海となるべき抱負の下に大方針を打樹てるべきである。

 本教が宗教団体でありながら、最先にこの点に着眼し現在実行に着手しつつあるのが、本教のモットーである地上天国の模型である、そのため熱海を選択したのであって、今や如実に建設の歩を進めつつあるのである、言うまでもないが、この熱海こそは山あり、海あり、島あり伊豆の海岸線遠く、川奈辺まで幾条の岬の遠望の明媚なる左に真鶴岬の景観あり、気候の温和、温泉の清き、又天下の箱根にも近く、東西両都の中間に位し、交通の至便なる実に天与の理想的観光地である、それにも拘はらず、前述の如く充分なる魅力を発揮し得ない事はまったく従来の方針が温泉のみに依存し、長夜の夢を貪っていた結果に外ならないのである。

 由来、外客は日本人の如く、温泉には余り関心を持たない以上、温泉以外の自然の風致を大いに生かさなくてはならない、それには喧噪卑俗の市街地に遠ざかり、熱海郊外の静かにして眺望絶佳な地点に理想的大ホテルを設置するのが急務である事は勿論である。

 以上の意味に於て、本教が目下開拓中の熱海市に近くして程よく離れたる東端と西端の景勝地に一大ユートピアを建設中で、将来熱海発展のための礎石たることを確信してはばからないのである。

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