夜昼転換  (天国の福音 昭和二十二年二月五日) 

      私は約二十数年間に渉って治療した患者は無慮数万人に上ったであらう。その体験から得た結論は一言にしていへば「病気の原因は薬剤である。」といふ事である。凡ゆる病患の原因を探求すればする程、悉く薬剤ならざるはないのである。もし人類が之に目覚めない限り何時かは滅亡に至るべきは一点の疑ふ余地はない。斯くの如く恐るべき薬剤を救世主の如く信頼し、随喜し、不知不識の間に弱体化し生命を短縮させるといふのであるから「愚かなる者よ汝の名は文化人なり。」と言ふも敢て過言ではあるまい。戦争も飢餓も、薬剤に比ぶれば物の数ではない。斯く曰ふ私の言葉は余りに極端であるかも知れない。然し私はそうは意(オモ)はない。唯だ私がはっきり知った事実ありの儘、些かの誇張もなく叙()べたまでである。そうして私が最も不思議に思ふ事は世界に於て最高度の文明国と謂はれる国が此事に未だ気の付かない事である。原子爆弾の原理は発見し得ても医学の誤謬は発見し得られない事である。戦争犯罪者とは誤れる国家主義によって他国を侵略し他民族を殺戮した処の許すべからざる徒輩である事はいふまでもないが、彼等の罪悪は或一定期間だけであって、その野望は遂に打砕かれるに到る事は吾々が現に今視つつある処である。然るに医学のそれは数千年前からの持続的罪悪であるが、其事に気付かないばかりか反って医学とは聖なる職業であり仁術でさへありと思惟する観念に重大性がある。又斯うも言へると思ふ、それは人智の発達程度が医学の誤謬を発見するまでに至ってゐない事である。然し乍ら之には理由がある。それは次に説く事によって読者は諒解するであらう。

      霊界と現界との関係に就ては前項に説いた如く、現界の凡ゆる事象は霊界の移写であるとして、茲に霊界に於ては、最近に至って一大転換の起りつつある事で、それを知る事によってのみ凡ては判明するのである。

      本来天地間凡ゆる森羅万象は、曩に説いた如く、霊界と現界との両面の活動によって生成し化育し、破壊し創造しつつ、限りなき発展を遂げつつあるのであるが、之を大観すれば無限大なる宇宙であると共に、無限微の集合体である所の物質界でもある。それが極りなき転変によって停止する所なき文化の進歩発展がある。そうして心を潜め之を静かに稽(カンガ)ふる時、宇宙意志即ち神の目的と其意図を感知しない訳にはゆかないであらう。そうして一切に陰陽明暗あり、夜昼の区別がある。又春夏秋冬の変化や万有の盛衰を観る時、人生にもよく当嵌るのである。又総てに渉って大中小の差別あり、之を時に当嵌める時、即ち一日に昼夜の別ある如く、実は一年にも十年にも百年、千年、万年にも昼夜の別があるのである。然し乍ら之は霊界での事象で、現界に於ては一日の昼夜のみ知り得るに過ぎないのである。

      此理に由って、今や霊界に於ては何千年目か何万年目かに当然来るべき、昼夜の切換時が来たのである。之は重要事であって、此事を知らない限り本医術の原理は判り得ないのである、と共に之を知る事によって、本医術は固より世界の将来をも見通す事が可能となり、茲に安心立命を得らるるのである。然らば霊界に於けるこの何千年目かの昼夜の切換へが現界に如何に反映しつつあるかを説示してみよう。

      右の意味によって、霊界に於ける世界は今日迄夜であった。夜の世界は現界と同様暗くして、定期的に月光を見るのみである。勿論水素が多く、月が光を隠せば星光のみとなりそれが曇れば真の暗黒となる。これが移写せる現界の事象に徴()ても瞭かである。即ち今日迄の世界、国々の治乱興亡の跡や、戦争と平和の交互に続く様相等は、恰度月が盈()ちては虧()ける如くである。然るに天運循環して今将に昼に転換せんとし、恰度その黎明期に相応するのである。

      そうして霊界に於ける夜昼転換の結果として、人類が未だ経験せざる驚くべく、悚(オソ)るべく、歓ぶべき一大変化が起る事である。而もその端緒は既に表はれ始めてゐる。

    先づそれを説明してみよう。

      私が曰ふ昼の世界とは、現界のそれと同じく、先づ東天に日輪の光芒(コウボウ)が現はれるのである。視よ、地球の極東日本-即ち日の本に於ける一大変革である。此国は今や夜の文化即ち既成文化崩壊が開始されたのである。見よ重要文化都市の崩壊、産業経済の致命的状態を重なるものとし、人的には特権や指導階級の全般的没落等々は全くそれが為である。そうして次に来るもの-それは昼の文化の建設であるが、之等も既に表はれかけてゐる。視よ、日本に於ける徹底的武装解除に次いで民主主義の抬頭である。此二つの現実は、日本に於ては建国二千六百年以来洵に空前にして予想すら出来得なかった処のものであるが又世界永遠の平和確立への第一歩でもあらう。本来夜の世界とは闘争、飢餓、病苦に満ちた暗黒時代であるに反し、昼の世界とは平和、豊穣、健康等の具備せる光明時代である。現在の日本-それはよくその転機の様相を表はしてゐる。

      然し乍ら、東天に昇り初めた太陽は軈(ヤガ)て天心に到るであらう。それは何を意味するか、言ふ迄もなく、全世界に於ける夜の文化の総崩壊であると共に、昼の文化が呱々の声を挙げる事である。それは凡そ予想し得られよう。何となれば日本が既に小さくその模型を示してゐるからである。而も世界の決定的運命は目前に迫りつつある。恐らく何人と雖も此框(カマチ)から免れる事は出来得ない。唯だ苦難をして最小限度に止め得る方法のみが残されてゐる。然しその方法は此処に一つある。即ち本医術の原理を知って、昼の文化建設の事業に加はる事である。

      聖書の一節に曰く「普く天国の福音を述べ伝へらるべし、然る後末期到る」と、之は何を指示してゐるのであらうか、私は信ずる。それはこの私の著述が右の使命を完ふするであらう事を!

      私は本医術の原理を説くに当って世界の運命にまで説き進めて来たが、之は重要事であるからである。それは本医術の原理発見も、医学の誤謬発見も、その根本は夜昼転換といふ一点に懸ってゐるからである。

      既に説いた如く、病気の原因は人間霊体の曇りにあり、その曇りを解消する。それが病気治癒の唯一の条件でありとしたら、本医術発見以前の世界にあっては何故発見出来得なかったかといふ疑問であるが、その理由は斯うである。曩に説いた如く病気治癒の方法に二つある。一は毒素を浄化以前に還元する。即ち固め療法であり、二は右と反対に毒素を溶解し排除する方法である。既存医学は前者であり、本医術は後者である事も、読者は既に充分認識されたであらう。

      そうして本医術の原理が、人体より放射する一種の不可視的神秘光線でありとしたら、此神秘光線の本質は何であるかといふと、それは火素を主とせる一種の人体特有の霊気である。故に施術の場合、火素の多量を要する訳であるが、昼の世界に嚮(ムカ)ふに従って、霊界に於ける火素は漸次増量する。何となれば火素放射の根源は太陽であるからである。そうして火素は治病に効果ある以外、今一つの重要事がある。それは霊界に於ける火素の増量は、人体の浄化作用をより促進せしむるといふ事である。

    即ち霊界の変化は直接霊体に影響する。火素の増量は霊体の曇りに対し、支援的役割ともいふべき浄化力強化となる事である。従而病気は発生し易くなると共に既存医療の固め療法の効果が薄弱となり終に不可能となる。例へば夜の世界に於ては一旦固めた毒素は再発まで数年要したものが、漸次短縮され、一年となり、半年となり、三月となり、一ヶ月となるといふやうになり、終には固める事は不可能とさへなるのである。之に就て最も好き例は彼の種痘である。之は日本に就ての実例であるが、数十年前は一回の種痘によって一生免疫されると謂はれたものが、漸次期間短縮され十年となり五年となり、最近に至ってその効果は非常に薄弱になった事である。其他種々の病気にしても年々増加の傾向を高めつつある事も見逃すべからざる事実である。

      以上によってみても、漸次夜から昼に転移しつつある事を知るであらう。全く夜の期間に於ける病気治療の方法としては、溶解よりも固める方が有利であった。それは毒素溶解に要するだけの火素が不足であったからである。従而次善的方法として固める方法を執るの止むを得なかったのである。それが終に人類社会に対し短命、病気、飢餓、戦争等の苦悩の原因となった事は、実に悚るべき誤謬であった。

      以上の如く夜昼の転換を認めるとして、その時期は何時頃であらうか。私は最後の転換期は茲数年は出でないと惟(オモ)ふ。何となればそれに就て好適例がある。それは私の弟子数万人が病気治療に際し、年一年否一ヶ月毎に治病の効果が顕著になりつつある事である。即ち曩に三ヶ月を要した同程度の病気が、一ヶ月となり、半ヶ月となり、十日となり三日となるといふやうに、時の進むに従ひ短縮されつつある事で、之は異口同音に何れも唱へてゐる。要するに之は霊界に於ける火素増量の速度を示してゐる事であり、昼の世界の刻々迫りつつある事を示唆せる證左でなくて何であらう。

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