真 理 『教えの光』 (1.宗教、科学、哲学、芸術の問題)昭和二十六年五月二十日

【お伺】真理について

【御垂示】これは一概に言えない。真理はその人の見方と立場によって異う。神からご覧になるのと人が観るのと違うし、神でも上中下の位があるから、下位の神の見らるる真理と、最高の神の見らるる真理とはまた大いに異うのである。人間が真理と信じていることで、神から見て逆理の事も往々ある。森羅万象の一切とその動きは真理ならざるはない。何となれば万有全体の上にまし座(ま)す神としては、その全体が御自分のものであるからである。又一切を二つに分けると、その各々の真理は陰陽相対的に異ってくる。その二つのものがそれからそれへいくつにも分かれるに従って、それぞれ異ってくる。要するに小さく考えるのと、大きく考えるのとでも異って来るのである。

 人類社会における真理、それはどうしても、正しい事を基本にしなくてはならない。宇宙の真理とても善を主に動いているからである。もし悪を真理とするとすれば人類社会はすでに崩壊し一切は滅亡していたはずである。そうならないで現在のごとく栄えているのは、少しずつでも正が勝っていることを証拠立てている。それによってみても善が栄えるのが真理であるという事に帰着するのである。

 しかしながら人類社会に善なる者のみで、悪なるものがなかったならば、今日のごとく文化は発達し得なかったのである。悪があって善の活動を妨げたり苦しめたりすることによって善の力を強め、その進歩を促進せしめたのである。以上は大乗的な説き方であって、ある程度の覚りを開いた人に説くのは差し支えないが、小乗的な人にはその真意は解し難く、誤解を招く懼(おそ)れがあるから注意すべきである。

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