喘息/肺結核 [中体の上部・中部]『岡田先生療病術講義録』下巻(二)昭和11(1936)年7月

 中体の上部と中部は、病気が関連していますから、上中一緒にして説明致します。

       肺結核

 中体の主要機関は、何といっても肺であります。右肺は大きく左肺は小さい。それは、心臓が左にある為で――

 心臓は日に相応し、肺臓は月に当る事は前にお話致しました。

 症状としては、微熱又は高熱、咳嗽、喀痰、血痰、喀血、食欲不振、下痢、盗汗、息切、疲労、胸痛、首及び肩の凝り――等であります。

 まず、発熱の原因は種々ありますが、その「熱発部」としては――淋巴腺及び耳下腺、頸腺、首の付根、肩部、脊〔背〕部、胸部、腹部、腰部――等であります。

 診査の際、掌を宛(あ)つれば、熱のある個所はよく判るのであります。

 その熱発部を指査し、特に痛む個所は――水膿溜結であって、それを溶解すべく「熱の工作」が起りつゝあるのであります。

 胸部の熱発は、胸骨に水膿が溜結している証拠であって、指圧すれば必ず痛みがあります。

 これらの症状の場合――まず「肺尖加答児」又は「肺門淋巴腺」――といわれるのでありますが、吾々の見る所では――この際肺には未だ異常はないのであります。

 いわゆる、肺患になるまでの順序を述べてみましょう。最初、浄化作用に因る水膿や毒血が頸部の周囲に滞溜しますが、それの浄化作用が風邪であって、それを繰り返しつゝ胸部の水膿溜結にまで及ぶ、順序は「病気の本体」の項目に詳しく述べてありますから略しますが、それから進んで心窩(しんか)部の両側――臍部辺にかけて水膿が溜結する。これが喘息の原因であって、咳嗽や息切がおこるのは勿論、喀痰も伴うのであります。

 なお進んで腹膜部まで水膿溜結するので――それが腸を圧迫し、又は水膿排除作用によって、下痢症を起すのであります。

 肺患の場合の咳嗽も、ほとんどこの喘息の為が大部分であります。

 もっとも肺患そのものからの咳嗽もあるにはありますが、それは肺炎の予後『肺臓内に残存せる喀痰』による場合と――

 肺壊疽(えそ)、肺臓癌、粟粒(ぞくりゅう)結核などであります。

 もっとも『頸部、肩部、胸部における熱発』による咳嗽などもありますが、それは軽微であります。

   喘 息 

ここに喘息についてお話致します。

 この病気は誰しも咳が出る為、気管がわるいように思いますが、原因は意外にも気管ではなくて、前述の個所であります。

 故に、この部を指査しますと、水膿溜結がアリアリ判って、相当痛みを感ずるのであります。

 これを溶解するに従って、漸次、咳嗽は減少してゆくので、指圧しても無痛になった時は咳嗽も消滅した時で、昔から不治とされた喘息も、本療法によれば確実に全治するのであります。

 この病気は、最も治癒し難いとされておりますが、実験上まず七十パーセント位は治るのであります。

 そうして、衰弱がはなはだしくない限り順調に治癒しますが、相当の日数即ち普通二、三ケ月から六ケ月位を要するのであります。

肺壊疽、肺臓癌、粟粒結核等は、稀な病気ですが、悪質であります。

 初期なら全治するが、二期以上はまず不治と見なければならないのであります。

 この病気は、徹底的説明をするには、どうしても現代医学を非難する事になりますから、徳義上、差控(さしひか)えたいと思うのであります。

 宜しく、実験によって知るより致方ないのであります。

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