岡田茂吉 胃病『岡田先生療病術講義録』下巻(三)昭和11(1936)年7月 | 岡田茂吉を学ぶ

胃病『岡田先生療病術講義録』下巻(三)昭和11(1936)年7月


 今日、胃病という病気になるのは、ほとんど全部が薬の中毒といっていい位であります。消化不良とか胸焼、胃酸過多、アトニー、胃痛などいろいろありますが、原因は一つで、最初は食物がもたれたり、不消化であったり、胃が痛んだり、胸が焼けたりする。しからば、それらの原因は何かというと、これは全く食物の分量を決めたり、食事の時間を決める為であります。何となれば、分量や時間を決めた以上、前の食物が消化されない中(うち)に食う為に、前の分が醗酵し腐敗し、前述のごとき胃の病的症状を起すのであります。

 でありますから、腹が減れば食い、減らなければ食わない主義にすれば、絶対に胃病は起らないのであります。

 私はこの方法によって永年の胃腸病が治り、今日は頗(すこぶ)る健全であります。

 このような病的症状が起った場合、その原因に気がつき、それを改めれば容易に治るのであるが、誰しもその場合薬を服む。それがいよいよ胃病の始まりであります。

 薬を服むと確かに一時は快くなるが、原因を改めない限り再び起きるので、その度毎に薬で抑える。その為ついに慢性になるのであります。それで胃痛や胸焼や種々の苦痛は胃の浄化作用であるから、放任しておけば必ず治る。それを薬剤を服むと浄化作用が一時停止される。それで一時苦痛がなくなるから、それを「薬で治る」と信じるのでありますが、何ぞ知らん、事実は「治癒を停止」させたに過ぎないのであります。実際、薬で治癒されたなら、最早病気はおこらないはずであるのに、再び起るというのは「治らない」からであります。

 言換えれば、胃自身としては治ろうとして痛むのを、治ってはいけない――というように薬を服むという理屈になるのであります。そうして、胃がわるいと消化薬を服む、そして消化のよい物を食べるんですが、これがまた大変な誤りで、態々(わざわざ)胃を弱くするんであります。何となれば、胃は胃自身の活動によって、物を消化する様に出来ている。それによって胃は健全を保っているのであります。ところが消化薬を服むと、胃は活動しなくとも済む。薬が消化してくれるからで、その為胃は段々弱体化する。有閑者のようになる。そこへ消化のいい物を食うから、なお拍車をかける訳で、益々胃は退化する。退化するから薬を倍々(ますます)服む――という循環作用でついに慢性になるのであります。そうなると、偶々(たまたま)固い物を食ったりなどすると胃はとても骨が折れる。もう「消化する力」を失っているので、そのまま腸へ送る、腸も胃の影響を受けて弱体化しているから、下痢し易くなるのであります。

 中には反対に便秘する人があります。これは食物が少量過ぎる為と、胃薬で柔軟化させ過ぎる為であります。

 ですから、下痢と便秘と交互にする人がありますが、全く前述の理によるのであります。

 自然に任せておけば、順調に排除されるのを、薬剤によって不正にさせ、苦しんでる人が、随分世間には多いようであります。

 胃潰瘍

 次に、胃潰瘍と胃癌ですが、胃潰瘍は全く薬と飲酒が原因で、特に薬剤の方が悪性であります。それは、胃薬は食物を柔軟化させると共にいつしか胃壁も柔軟化さしてしまう。それが為少しの固い物が触れても、亀裂を生じ易くなり、その結果血液が参出するのであります。その血液が胃の一部に滞溜して、便に混入して出る事があります。この場合、古い血ほど黒色なのであります。出血がなくとも胃潰瘍といわれる事がありますが、出血が無ければ潰瘍にはなっていないのであります。亀裂が大きい程出血が多量であります。口から血を吐くのはそれであって、こういうのは血が新しいから赤いので、これは重症であります。

 しかるに、この胃潰瘍を薬で治そうとするが、それは不可能であります、何となれば言うまでもなく、薬が原因の病気であるからであります。

 胃潰瘍は、薬をやめて痛みと出血のある内は流動食ばかり摂らせ、出血が止まればお粥のような物を食わせ、そして段々普通食にすればいいので、衰弱さえはなはだしくなければ必ず治癒するのであります。

 日数は軽症で一ケ月位、重症で三ケ月位であります。

 胃 癌

 この病気は余程前から世界中で研究しているが、原因はどうしても判らない。それで現在は、癌を治療する研究ではなく、癌を発生させる研究をしている実状でありますから、まず治療法発見までには、今後何十年あるいは何百年かかるか判らないのであります。

 しかるに、吾々の方では現在完全に治癒する事が出来るのであります。ここでその癌の原因と発生の経路をお話致します。元来、癌なるものは、青年期には発生しない。四十歳以上でなければおこらないという事実でありますが、これはどういう訳か。この点から解決されなければならないのであります。

 それは、人体内にある毒素が、自然浄化作用によって常にいずれかに集溜しようとしている。しかるに、集溜作用は運動等に因る――神経活動の部に限るので、青年期には全身的活動旺盛の為、四肢五体に分散するのであります。

 しかるに、老年期に近づくに従い運動不足になる結果、毒素は一部分に集溜しようとします。即ち、運動不足者は、肺、心臓は余り活動しないから、どうしても、胃の部に集溜するのであります。

 そうしてその毒素なるものは水膿でありますから、それは時日の経過によって固結してゆき、進んで化膿性になります。この化膿した一種の内部腫物は、胃の外壁から内壁へと蝕入(しょくにゅう)してゆく。これが胃癌になるまでの経路であります。

 診査の場合、胃部を圧して痛い塊のあるのは、まず「癌の卵」と思えばいいので、普通、心窩(しんか)部から臍までの間の中央線が主で、次がその両側であります。

 しかしながら、胃部に滞溜した水膿も、その人が浄化力旺盛であれば、自然下痢などによって排泄されるのであります。

 近代人は、少しでも不快だと直ちに薬を服む。薬剤は浄化力を弱め、特に胃薬が胃を衰弱させるから、胃の抵抗力を減ずる結果、排泄されないで、ついに化膿するまでになるのであります。

 化膿が進めば、胃の一部に穿孔される事になる。そうなると胃の活動はほとんど停止され、又その孔からの排膿作用も加わって、旺んに嘔吐をするのであります。

 しかし、癌は身体が衰弱してさえいなければ必ず治るのであります。何となれば、胃は仮に化膿しても浄化すれば元の様になる性質のものであります。

 胃癌の最初の徴候は、胃痛又は重圧感であります。嘔吐が加わるのは、相当進んでからであります。

 胃癌の初期ですと、本療法で一週間ないし二週間で全治するのであります。

 次に、最も注意しなくてはならないのは末期のものです。これは治療する場合に、非常に危険があります。それは、癌を溶解するのに急激ですと、内出血するから生命に係わるのであります。故に末期の癌は極めて徐々に治療しなければならないのであります。

 私が以前扱った患者で、腸の一寸位上の方に、護謨毬(ゴムまり)位の癌があって、治療二、三回でずっと萎(しな)びたので喜んでいると、間もなく死んだのであります。それは、急に癌が溶けた為、内出血したので、これは私の無経験による失敗でありました。そういうのは圧してはいけない。極く軽く触れるか触れない位にしてやらなくてはならないのであります。

 胃癌によっては、腸又は肝臓部へ移行する場合もありますが、これは最も悪質であります。普通の進んだ症状に、コーヒーのようなものを沢山吐瀉(としゃ)する事がある。あれはよく出血といいますが、私には、そうは思えないのであります。あの吐瀉物は、煙草かコーヒーのような色で血の色ではない。そしてこれを随分吐きますから、血液なら生命を保てる訳がないと思うのであります。

 これは、沢山飲んだ薬剤の化学的変化した物と思うのであります。勿論この中に幾分血液は混っておりましょうが、全体としては他の物質と思うのであります。

 胃下垂


 次に、胃下垂でありますが、原因は、消化薬を服みつつ柔い物ばかり食うから胃が弱る。それで緊張が無くなるから弛緩し、下垂するのでありますから、「人為的製造病」であります。しかし、胃下垂と言って来る患者で事実下垂のものは十人に一人位であります。それは、実は、水膿溜結の大きいのが胃から腸の部分にあるので、それが下垂のように見えるのであります。

 この症は、本療法で溶解すれば、一、二週間位で簡単に治るのであります。

 又真の胃下垂は、食物の改良――即ち普通米飯食になし、薬剤を服まなければ短時日に治るのであります。

 胃痙攣

 胃痙攣は、水膿溜結が段々固結した時、胃の方が不消化物又は大食をして膨脹する時、胃とその固結物とが押合って痛むので、その痛みのひどい為に痙攣を起すのでありますから、その固結を溶解すれば全治するので、割合容易であります。

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