今回は不思議な夢の話をします。
当時世界救世教の幹部養成機関として設立された京都救世専門学院の5期生として入学が許され、二年間の学びを修了して卒業した直後のことでした。
私たちは、春季大祭のあとに辞令交付されるまでの間、瑞雲郷から少し離れた東寮(今は建物は存在しない)を宿舎として、聖地での奉仕研修をしていました。
三月末のある夜のことです。
三代教主様が北海道にご巡教されるというので、私は青森港の桟橋で、一人ご一行の到着を待っていました。そこへご一行が到着されて、三代様からカバンを預けられました。連絡船内で、そのカバンを誰かに奪われてはいけないという思いと、何かあったらすぐに対応できるように、ご一行のそばを離れることなく、両手で大切に抱えていました。間もなく連絡船が函館港に到着して、カバンをお返しすると、三代様から「ありがとう。あなたは、ここでいいわよ。」と言われて、札幌に向かうご一行をお見送りしました。夢はそこで覚めました。それまで教団の偉い人の夢なんて見たこともなければ、三代様の夢もこれが初めてのことで、不思議な夢だなと思っていました。
そして数日後、二日間の春季大祭も無事に終わり、いよいよ辞令交付の時となりました。どこへ配属されるのか。私だけでなく、皆が胸をワクワクさせていました。順番に名前を呼ばれて辞令を受け、ついに私の番となりました。私の辞令は、「渡島檜山支庁本部勤務を命ず」というものでした。一瞬、「渡島檜山支庁本部ってどこだろう」と思いながら、終了後に担当者に確認したら、「函館」だということでした。私は心の中で「えー!」と叫び、この前の夢は、正夢だったんだと思いました。
それ以降、私は「教主様のカバン持ち」という意識をもって専従生活を送ってきたつもりです。「カバン持ち」には、「太鼓持ち」のような意味合いもありますが、私はそのような意味では受け止めていませんでした。「カバン」は、仕事をする上で大切なツールの一つで、中にはいろいろな道具が入っています。教主様が必要な時に、必要なものを取り出し、教主様のご神業の手助け、補佐役をするのが専従者の心のありようではないか思っていました。この不思議な夢以来、「生涯明主様の専従者。一生教主様のカバン持ち。」を信条として専従生活を送ってきました。
それ以来、三代様の夢は、10年ほど見たことがありませんでした。教団が派閥争いともいうべき紛争に揺れる中で、私が丁度30歳になった時に本部に呼ばれました。これも不思議なことでしたが、これについては、別の機会に話をしたいと思いますが、本部に行ってみると、私を含めて5人呼ばれていました。担当課長から、「これから君たちを、しばらく外部の人に預けるが、嫌ならこの場で帰ってくれ。」と言われました。私たちは、お互いに顔を見合わせましたが誰一人帰るという人はいませんでした。その夜、私たちは、西楠荘という瑞雲郷のはずれにある建物に連れていかれ、外部の人たちと会いました。仮にこの外部の人たちのことをS機関としておきます。
三代様の2回目の夢を見たのは、その頃のことです。突然「三代様が、中庭でお呼びですよ。」という若い女性の声が聞こえました。その声と同時に、私は池のほとりの芝生の上に着物姿で立っておられた三代様の後方4~5mくらいのところに、片ひざをついて控えていました。三代様は何も話されませんでしたが、「いつもありがとう。これからもそばにいて守ってくださいね。」という意思が伝わってきました。私も言葉ではなく、心の中で「ハイ!」と応えました。後姿は、悲しみと不安に満ちていたように感じました。夢は、そこで醒めました。目が覚めてから、何でこんな夢を見たのだろうと思いながら、まるで御庭番のようだったと思いました。
丁度その頃は、教団紛争の中で、三代様は「静観」と称して一切表にお出ましになられなくなった時でした。数日後、教主公邸の碧雲荘に勤務していた妹に、「碧雲荘には、中庭はあるの?そこには池があるの?そこは芝生になっているの?」という確認をしたところ、「何で知っているの?」ということでした。またしても不思議な正夢でした。
三回目の夢は、それから間もなくだったと思います。私がかなり広い部屋で寝ている時に、人の気配を感じて目を開けると、枕元に三代様が白い着物姿で座っていました。私が起き上がろうとすると、「そのままでいいわよ。」という意思が伝わってきて、そのまましばらく沈黙があったあと、「いつも守ってくれてありがとう。これからも頼りにしていますよ。」という意思が伝わってきた。私が「ハイ!」と心の中で返事をしたところで目が覚めたのですが、続けざまに三代様を守るという夢を見た自分の役目は何なんだろうと、不思議に思った次第です。
そして、その年の暮れだったか、年明けだったか、当時MOA会長だった川合氏と男子会の懇親会の席に、私ともう一人、たまたま成城にいた二人がその席に参加するように言われました。その席上、会長の挨拶の最後で「・・・今日は、熱海から若い専従者を二人参加させましたが、彼らは今、忍者の御用をしている人たちです。皆さん、よろしくお願いします。」というような話をされました。もう一人の彼がどう思ったかは知らないが、私は夢のこともあり、会長が「忍者」という認識でいるのも不思議であり、夢の中での自分を御庭番のようだと思ったのと交錯して驚いた思いがあった。
その後、二次会にも誘われて、相当に機嫌の良くなった会長は、しばらく男子会メンバーと話をしたあと、私を自分の席の正面に座らせて、非常にまじめな表情で「今回の教団浄化は、自分たちが解決するつもりだが、将来においてまた同じような浄化が起きた時は、君たちが解決してくれ。頼むよ。」と言われた。私は、その言葉を、今も胸に刻んで生きている次第です。
ところで、それから一年後くらいに、教団が警備会社を設立して、私だけS機関を離れて警備会社に出向することになりました。そして、その警備会社での私の仕事は、三代教主様の身辺警護でした。私は、自分に霊的な感性があるとは思っていないが、今振り返っても不思議な夢であり、不思議な出来事だったと思っている。
by Mr.Right