ワクチン禍の実例 (自観叢書十 昭和二十五年四月二十日)

 昭和二十四年九月二十一日毎日新聞投書欄に「ワクチン禍」と題した左の如き記事があった。

 宮城県栗原郡岩ケ崎町の百日咳ワクチン禍事件の被害患者父兄一同から世のみなさんに訴えます。 昨年十一月町から百日咳の予防接種を施行する通達があり、子の幸福を願う親たちはその通達を忠実に守ったのです、ところがこれをうけた発育盛りの幼児のうち六十四名もに結核菌が注射されていようとは神ならぬ身のだれが考え得たでしょう。

 最初は注射個所が化膿して来たが、親達は、「その中に…」と軽く考えておりましたが、今年の一月末になってこれが恐るべき結核だということが判り肌あはが生じたのです。幸に総司令部の同情と関係機関の好意で三月初め患者全員入院加療ということになり、そのうち一名の貴い犠牲者を出すに到りました、親達の不安は極度に達し、一家に笑い声の消えた暗い明け暮れでした。八月二日比較的 重症者三名を残して全部自宅療養となりました、しかし退院した者の半分は地元医師で淋巴腺結核の外科施療を受けております。

 今後の療養は一に親の深い慈愛と十二分な栄養摂取による経済的苦痛の伴う闘病生活が要求され、私達は又々大きい壁に突き当ってゐます。幸い今日まで若干の補助があったというものの長期療養に家庭経済は全滅の状態にあります。

  私どもはこの苦悩を町に県に、政府に訴え続け叫び続けて救済を歎願して参りましたが、何れも「近い将来に原因が究明され、責任の所在が明らかにならなければ手が打てない」というのみです、責任の所在を明らかにすることは勿論ですが、予防接種が原因であることは動かせない事実です、してみれば、かかる不幸な目に遭った者の救済は人道上まことに大きな問題ではないでしょうか、厚生大臣の御意見が伺えれば幸せです。 (宮城県百日咳ワクチン禍乳幼児父兄代表 森 良男)

右は接種の場合
(一)注射器の消毒不完全の為か(二)薬剤そのものの為か(三)薬剤に結核菌の混 入せる為か此三つの疑点以外考えようがあるまい、とはいっても(一)の注射器消毒 不完全とは思はれない、まさか二人か三人なら兎に角、六十四人もの多数が消毒不完全な為結核菌侵入とは受取れない(二)の薬剤そのものの為の筈はない、というの は、如何なる薬剤でも薬毒の為に結核と同様の症状が表はれる訳はない(三)の薬剤 中に結核菌が多数生存し得る筈は絶対あり得まい、とすれば、如何なる原因か、全然 判りやう筈はないので、実に不安極まる話しである、何となれば真原因が判明すれ ば、今後その対策を樹て得られるが、そうでないとすれば危険なしとは言えない、大事なわが子に接種を受ける者は恐らくなくなるだろう、故に先づ此接種は一時とりや め、新規蒔直しに研究をやり直し、絶対危険のない保證が出来た暁、予防接種を行うべきが妥当ではないかと思うのである、そうしてよく種々の注射によって、集団的に 被害を受ける事実は常に見聞きする処であるが、之等を恐れて注射を拒否する場合、 その係りの役人は強制的に注射を施行せしめる事実もよく聞く処である。

以上によってみても、今後予防接種に対しては、研究を重ね、注射禍による一人の 犠牲者もなきよう、万全の策を建てられん事を吾等は希望するのである。

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