私の仕事を邪魔しないで呉れ(上)(栄光131号 昭和26年11月21日)

私が今、全身全霊を打ち込んで努力している事業は、信者はよく知っているが、近来識者の間にも、大分理解する人が増えて来たようで喜ばしいが、まだ誤解している人もあるらしいから、之等の人の為に少しかいてみるが、此人達も勿論本教の真相を知らないからで、世間の噂や言論機関のデマなどで迷わされたり、中には生まれつき宗教が嫌いな、無神論のカチカチ屋などもあるだろうし、そうかと思うと嘘のような話だが、悪が好きなのか、宗教は善を勧めるから、癪に障るという人もあるらしい。然し乍ら先ず共産主義者以外の人なら、自分の生まれた此日本の国が、よくなる事に反対する者は一人もあるまい。

そこで今書こうとする此文の目的は、神とか信仰とかいう宗教的の事は、一切抜きにして、普通人でも理解出来る面の事を主としたものである。それは私が今造営中の箱根熱海に於ける地上天国の模型であって、箱根の方は規模も小さいので、茲では熱海の方に就てのみかいてみるが、私の最初からの計画は世界に二つとない自然美と人工美とをタイアップさせた一大芸術品を作ろうとするのである。

そういう訳で、先ず世界的にみても一番風景に富んだ国としたら、我日本であるというのが定説である。成程私はまだ外国へ行った事はないが、種々な点からみてもそう思えるのである。私がいつも言う如く、日本は最初から神が其御目的の下に造られた世界の公園であって、而も幸いな事には自分が此国に生まれ、現在住んでいるのであるから、万事好都合なのは勿論である。そこで日本のどの地点が其条件に最も叶うかを調べた処、何といっても箱根熱海である事が分かったので、私は箱根熱海を探した処、不思議にも思い通りの土地も住む家も見付かり、容易に手に入ったのである。其後終戦となるや凡(すべ)てが順調に運び、箱根といい、熱海といい、どちらも必要な地域が次々手に入り、現在はどちらも二、三万坪になんなんとする程になったので、広さに於ては先ず充分と言えよう。併し箱根の方は何しろ山が嶮しく、巌石重畳としているので、大規模の構想には不適当だが、そこへゆくと熱海の方は山は高からず、土の処も多いので、自由に大規模な計画が出来るという訳で、目下熱海に造営中なのがそれである。

 此地が凡ゆる条件を具備している事は、先ず何よりも素晴しい眺望である。恐らく日本中何処を探しても、之程の所はあるまいとは、観る人の一致する言である。而も交通至ってよく、人も知る如く関東と関西との殆んど中間になっており、東西何れからでも容易に往来出来る。其他の特色としては冬暖かく、温泉豊富にして、周囲の山並を包んでいる緑の色、鏡の如き相模湾の海原、右手遥かに五つの岬が描いている曲線美、左手真鶴の突端にある二、三の小島も面白く、晴れたる時は地平線上夢の如くに浮んでいる三浦半島の一線、霞の奥長々と寝ているような一条は房総半島で、有名な鋸山のギザギザな不思議な曲線が目を惹いている。まながいには盆石の佇(たたず)まう如き初島あり、其右手には有名な噴火に似合しからぬ柔かい線の大島も見える。

 右の如き絶景を一望に収むる此地点が、瑞雲郷中央の景観台であって、ここは位置といい、山の高さといい、全景観の眺めには最も好適で、ここに身を置く時宛然(さながら)此世の天国にある思いするとは、誰もが絶賛する処である。全く天地創造の時神が準備された聖地であり、神の大芸術品でなくて何であろう。而も駅から徒歩で十五分、車で五分で行ける近さで、路はダラダラ坂であるから交通も至便である。そうして最初此土地を手に入れたのが昭和二十一年であったから、恰度(ちょうど)今年で五年になる。今迄毎日五十人から百人位の人間が、私の設計のまま一生懸命に働いているので、地形だけは本年一杯で大体出来上る心算(つもり)である。そこへ植える花樹は躑躅二十種類で二千本、桜一千本、梅五百本を主なるものとし、其他出来るだけの種類を網羅した花樹を植込み、次から次へ花の絶えないようにする。先ず理想的一大パラダイスと言ってよかろう。

 そこで愈々(いよいよ)来年春頃から建築に取掛るが、最初は敷地千三百坪の上に、八百坪一階建のメシヤ会館を建てるが、勿論鉄筋コンクリートで、様式は現在世界の建築界を風靡している彼の仏蘭西(フランス)の、ル・コルベジュエ式を基本とし、それに私の考案を入れた画期的新形式のもので、出来上った上は恐らく世界的宗教建築として世の注目を引くであろう。成程コルベジュエ式は確かに時代感覚にピッタリしてはいるが、荘厳味に欠けており、官庁、アパート、住宅等の実用向にはいいが、宗教のそれとしては、どうも相応しからぬ感がある。といって今更古典的な昔人の遺品のようなものも採りたくないから、ヤハリ時代的感覚を充分表現したものでなくてはならないと共に、内部の装飾其他もそれに似合うよう新機軸を出すつもりである。

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