乳幼児の健康 (自観叢書十 昭和二十五年四月二十日)

近来日本に於ける乳幼児の健康が非常に悪く、彼のアメリカに較べて死亡率三十五倍というのであるから実に驚くべきであると共に、一日も早く解決を要すべき重大問題である。それには先づ原因が那辺にあるかを発見しなければならないが、現在医学上に於てその原因なる物は殆んど的外れである以上、何程骨を折っても予期の効果は挙げ得られないのである。  

  然らばその原因はどこにあるのであらうか、それに就て私の発見をかいてみよう。以前私が乳幼児から五六歳迄の小児の病者を取扱った経験によると、都会児童の弱体なる事驚くべき程で、田舎の子供とは格段の相違がある。処が医学での解釈は、都会は空気が悪く、遊び場もなく、交通機関や騒音の為神経を刺戟する等の悪条件に対し、田舎は右と反対に好条件に恵まれてゐるからだというのであるが、成程それ等の理由も相当あるにはあるが、それよりもモット気のつかない処に最大原因がある。それに就て当時私の扱った病児や弱体児童の母親に斯ういった事がある。「あなたの御子さんは、日本人の子ですか、西洋人の子ですか」と又、言葉を次いで「日本人の子は、先祖代々日本流の食物で育って来たのであるのに対し、急激に西洋の児童の食物や育て方をするから、それが弱い原因である」との注意を与へたのである。処で最滑稽なのは、在来の日本菓子を食べさせない、特に餡を嫌ふ母親がある。「何故餡を食べさせないか」と聞くと「お医者は疫痢の原因になるからいけない」との事で、私は「それは理屈に合はないではないか、小豆は便通に良いとしてわざわざ煮て食ふ程である、而もそれを精製し、砂糖を混え液体としたのであるから、どこに悪い点があ るか」といふたのである。又私は言葉を継いで「お医者さんは西洋の本を読んで直訳するので、西洋には餡がないから本に書いてない、それで言ふのである。従而お医者さんが言ふ病人の食物なども西洋にある通りの食物、即ち牛乳、オートミル、バター、林檎、ジャガ芋等によってみても肯くであらう」。

以上の理によって成人するに従ひ、西洋流の食物を漸次的に混ぜるやうにすればよい、先づ乳幼児から五六歳迄は、日本流の食物で育てる方が確かに健康にいゝ事は、私の幾多の経験によって断言し得るのである。 次に私の経験上、乳幼児に注射を多くすると、発育停止又は発育不能となって首などグラグラで、痩せて力なく貧血状を呈するのである。之等の幼児を二三年無薬にすれば、普通児の如き健康状態となるのである

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