頭痛/目眩/不眠症 [上体の上部]『岡田先生療病術講義録』上巻 (五)昭和11(1936)年7月

 今晩からいよいよ個々の病気の事についての御話になります。

患者取扱

 その前にまず最初、患者を扱う上において参考になる事をお話致しますが、医者の方では大体打診、聴診及び五指の圧診であります。

 聴診の方は音を聴く訳で大体肺病のラッセル(ゼーゼーした音)などを聴くには都合よく、打診の方は肋膜に異常があるかどうかを診る等が重で、叩いてみて音がカンカン言えばいいが、水が溜っているとボクボクという音がするのであります。

 又、お腹を手や指で圧(お)すのですが、吾々の経験から言うとこの圧診が一番良いので、これはお腹ばかりでなくどこでも圧診する必要があります。なぜなれば、例えば腹膜炎などの場合、その原因は多く腎臓や肝臓にあるのですから、この肝、腎の部を圧して病原を発見するのであります。本療法における病原発見は実に正確であると思います。

 しかしここで心得置くべき事は、取締規則に依れば、療術行為者は病気診断は出来ない事になっている。ただ患者の苦痛である個所を治療するだけしか許されていないのでありますから、それらの点を充分心得て善処されたいのであります。

 私等が新患者に対する場合、まずイキナリ額へ手を宛(あ)てる。そして熱ければ必ずそこに毒血がある証拠です。そういう人は頭が重いとか、眩暈がするとかいう症状がある。

 次に、両方のこめかみへ手を宛てると熱い。こういう人は必ず頭痛がするのであります。

 次に、眉毛の部を押してみて痛い人は毒血がそこに溜って居て眼に異常がある。

 上瞼を押して痛い人は確実に眼病になっている。それは眼球に毒血が溜結しているからであります。
 まず、病原発見はこういう工合なのであります。

人体の分類

 西洋医学では、内科と外科、婦人科、小児科、その他何々と別れますが、便宜上、こちらでは三段に分けます。

  

 

上体の上部

 上の図のごとく三段に分けて、又その一段を三段に分ける。

 まず上体の上部から説明致します。即ち脳からであります。

 そして医学の方と吾々の方との説明は大変違う事があるかも知れませんが、それは治療に当って自ら会得するより致し方ないのであります。しかし便宜上、医学の用語や説明を拝借する点もありますが、これは止むを得ないのであります。

 大脳は頭蓋骨で包まれ、そして小脳を蓋(おお)うております。これは上体のあらゆる機関が小脳に集って居るからで、つまり一番の中枢機関たる小脳を保護する為に大脳があるという訳であります。

 頭 痛

 頭痛には、全体的頭痛と偏頭痛と、前頭部頭痛と後頭部頭痛とがあります。

 原因は、毒血に因る場合と脳貧血に因る場合と二通りありますから、毒血の方から先にお話致します。

 この症状は、世間非常に多いもので、時々痛む人と慢性的に休みなく痛む人とあります。

 原因としては、毒血が上昇して前額部から前頭部両こめかみ等に滞溜し、それの浄化作用が痛みとなるのであります。

 まず患者の前述の部へ掌を宛(あ)ててみれば、必ず熱く感ずる。それは毒血のある証拠であります。それが治療によって冷くなるので、冷くなっただけは痛みが除れたのであります。

 次に、脳貧血に因る頭痛は右とは反対であって、頭脳に血液が欠乏して痛むのであります。

 これは頸腺付近に水膿溜結し、頭脳への血液送流を妨げられるからであります。

 後頭頭痛も、毒血又は貧血いずれかが原因でありますが、それは触査すればよく判るのであります。

 本療法に依れば、軽症で二三回、重症で二三週間で全治するのであります。

 眩 暈

 この症状の原因としては、図のごとく、首の付根の太い筋にゴリゴリがある。これが頭脳への血液送流を妨げるのであります。

 今一つは、前額部全体に毒血が滞溜し、その部に微熱を持つ為であります。

 本療法に依れば、軽症一週間位、重症二三ケ月位で全治するのであります。

 不眠症


 この病気は、後頭部の左右に頗(すこぶ)る頑固な水膿溜結が出来るので、まるで竹筒のようであります。普通治り難いとされてありますが、本療法に依れば順調に全治するので、軽症で一週間位、重症一ケ月位であります。

 この病気の慢性症は睡眠剤中毒に因る事が多いのでありますから、全治させるには薬剤を服用しては駄目であります。

     (精神病へ続く  )


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