はしがき 『天国の花』昭和6(1931)年7月10日発行


 電車に、公園に、街路に見る人々の顔に何んとそれは神経衰弱的な焦々しさと疲れた不満な厭世的形容体の多いことよ。
 笑ひを無くした。否笑ふにも笑へない社会苦の爆発? 生活苦だ! 失業地獄だ! 世界的不景気だ! 気の滅入(めい)るばかりの失笑渦の中だ。
 何で笑ひの有りやうがない。現代こそ黄金よりも、大政治家よりも、時速千哩(マイル)の飛行機よりもモツトモツトユウスフルなもの! それは笑ひだ! ほんとに笑ひだ。笑ひこそ万人健康の源泉! 若返りの秘訣だ。
 幸福は悧巧な面(つら)には見出だせない。何んとあまりにも悧巧な面の多すぎる時代相よ。窮屈な悧巧を粧ふ苦しみから逃れようではないか。で先づ吾等から愉快な馬鹿になつて明るく生きたいと思ふ。
  個人の元気も
  夫婦の愛も
  一家の幸福も
  世界の平和も
  人類の歓喜も
  笑ひで解決する
  笑ひこそ救世主だ!
  笑へ!
  大いに笑へ!
  笑つて元気で働くことだ。
と云ふ理由で生れたのがこの小冊子だ。

 昭和六年六月一日 大森八景園 松風荘主人

天人会規約(以印刷換謄写)
『天国の花』昭和6(1931)年7月10日発行

一、名 称  天人会

一、本会は地上天国出現の目的の下に大に笑ひ且(かつ)文芸を娯(たのし)み地獄的現代の世相に超然として高尚なる歓笑裡に天国楽園に遊ぶ思ひあらしめんとす。同好の士奮(ふるつ)て入会あらん事を。

一、会 費  一ケ月金三十銭(但句料不要句数無制限)

一、入 会  自由

一、出 題  毎前月十日

一、〆 切  毎前月三十日

一、開 巻  毎月十日午後七時より松風荘に催す

一、賞 品  選者筆美巻納色紙短冊等

一、発表の句は時々謄写に附し会員に配布す

      昭和五年八月 府下大森八景園(松風荘)天人会

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