「付録」霊科学 (天国の福音 昭和二十二年二月五日)

私は前項迄において、私が創成した処の新しき医術に就て概略解説した積りである。しかしながら尚徹底するには、霊及び霊界に関する凡有(あらゆ)る事象を一通り知らねばならないから、順次述べてみよう。

霊波と霊衣

私は曩に治病力としての神秘光線について説明したが、ここに今一層詳説してみよう。

人間の霊体は肉体と同様の形態を有しているが、ただ異る所は霊体には霊衣なるものがある。洋語ではアウルという。それは霊体から不断に一種の光波を放射している。恰(あた)かも霊体の衣ともいうべきものでその名がある。色は大体白色で、人により稍々(やや)黄色または紫色を帯びたものもある。そうして厚薄の差別はなはだしく、普通は一寸位の厚さであるが、病人は薄く、重症となるに従い漸次薄くなり、死の直前には全然なくなるのである。世間よく影が薄いなどというのは、この霊衣の薄い為の感じであろう。また右と反対に健康者は厚く、有徳者は一層厚く、光波も強いのである。英雄などは普通人より厚く、偉人となればなお厚く、聖者に至っては非常に厚いのである。しかしながら霊衣の厚薄は一定のものではなく、その人の想念や行為によって常に変化する。即ち正義に立脚し、善徳を行う場合は厚く、反対の場合は薄いのである。普通人の眼では霊衣は見得ないのが原則であるが、罕(まれ)には見得る人もある。但だ普通人でも心を潜めて凝視する時、ある程度感知し得ない事はない。

そうして霊衣の厚薄は人間の運命に大関係がある。即ち霊衣の厚い人程幸福であり、薄い人程不幸である。また霊衣の厚い人は温か味があり、接する人に快感を与へ多くの人を引つけるが、それは霊衣に包むからである。これに反し薄い人に接すると冷く感じ、不快、寂寞(せきばく)、長くいるを欲せざる事になる。この様な意味によって人は霊衣を厚くするよう努めるこそ、幸運の基である。

しからば、霊衣を厚くするにはいかにすべきやという事であるが、その説明に当ってまず霊衣なるものの本質を説明しよう。

人間の凡ゆる思想行為を分析する時、善悪孰(いず)れかに属する事は今更いうまでもないが、霊衣の厚薄も善悪の量に比例するのである。即ち善を想い善を行う場合、内面的には良心の満足感が起るので、その想念は光となり、これが霊体に加って光を増す事となり、その反対である場合、悪は曇りとなって霊体に曇りが増す。また外面的には人に善を行う時は相手の人の感謝の想念が光となって、善行者に対し霊線を通じて伝達するから光が増す事になる。その反対である場合、怨み、憎み、嫉み等の想念は曇りとなって伝達して来るから曇りが増すのである。これによってみても人は善を行い他人を喜ばすべきで、決して他人から憎み、怨み、嫉み等の想念を受けてはならないのである。

世間よく急激に出世したものや成金輩が、いつしか失敗没落するような事があるのは右の理によるのである。即ち成功の原因は自己の力量手腕、努力に因るとなし、増長慢に陥り、利己的独善的となり、贅沢三味に耽る結果、多数者から憎み、怨み、嫉み等の曇りの想念が蝟集(いしゅう)する結果、霊衣は光を失い、薄くなり、終に没落するのである。また何代も続いた名家や富豪などが没落するのは、元来社会的上位にある者はそれだけ国家社会から恩恵を受けている以上、それに酬いなければならない。即ち大いに社会に向って善事を行いこれによって断えず曇りを消すべきである。しかるに多くは己の利欲のみを考え、利他的行為に乏しい結果曇りの方が増量し、形態は立派であっても霊の方は下賎者同様になっている。その為霊主体従の法則によって終に没落する事になるのである。私は以前東京の大震災の少し以前、ある霊眼の利く人の話を聞いたが、それによれば大厦高楼(たいかこうろう)の街も、霊的には小さな陋屋(ろうおく)が立並んでいるとの事であったが果してその通りになり驚いたのであった。

またこういう例がある。それは米国の話だが彼の有名な大富豪初代ロックフェラー氏が未だ商店の小僧であった時、人は善事を行わなければならないとしてキリスト教会へ献金したのである。最初は一週間に五銭であったが、収入の増すに従い十銭となり五拾銭となり何千何万円となり、終には彼の有名なロックフェラー研究所のごときものを創設したのである。右の献金の額を最初手帳の裏面に記入したので、その手帳は同家の家宝となっているそうである。また米国最大のベツレヘム製鋼所を創設した彼のアンドリュー・カーネギー氏は、死に際会し、氏が平素から唱えた持論を決行した。それは全財産数億ドルを社会公共の為献金し、後継者たる子息には百万弗の資産と大学教育とを与えたに過ぎなかったとの事である。またミュンスターベルヒは大著『米国民』で美田を買わぬアメリカ富豪の気質を絶賛している。例えば一九○三年に大学、図書館、研究所などの寄付金だけで約一千万ドル、秘密の寄付はその数倍にのぼるという。また前大戦の直後、カーネギー氏は「国際平和財団」に巨額を寄付した。そのー部でドイツの学者や学界は蘇った。リープマン教授等が完成した戦争と犯罪に関する世界最初の尨大な研究叢書の公刊もかれの寄付金でやれた仕事だ、この研究だけでも、世界の幸福にどれ程寄与しているか測りしれないという。私はこれらの事実を考える時、米国繁栄のよって来るところを知るのである。それに引換え日本の財閥のあまり利己的であった事が、今日の没落を招いたであろう事を想い、決して偶然ならざるを知るのである。

また霊衣の薄い程、不幸や災害を受け易いものである。それはどういう訳かというと、曇りの為に頭脳が鈍り、判断が正鵠を欠き、決断力が乏しく、物事の見通しが付かない。したがって一時的成功を夢み焦るのである。こういう人は小成功はしても長い間には必ず失敗する。この意味において一国の政治が悪いという事は、霊衣の薄い人が政治を行うからであると共に、その悪政治によって苦しむ国民もまた霊衣が薄いからで、洵(まこと)に止むを得ない訳である。

また曇りの多い人は浄化作用が発生し易いから病に罹り易く、災害も受け易い。交通事故などで災害を受けるのは霊衣が薄いからで、厚い人はいかなる場合といえども難を免れる。譬(たと)えば電車、自動車等に衝突しようとする際、電車、自動車の霊は、霊衣の薄い人には当るが、厚い人には当らない。撥ね飛ばされて疵(きず)一つ受けないものであるが、これは霊衣の弾力によるのである。

右の理を考うる時、人間は善徳を積み霊衣を厚くする事こそ、幸運者たり得る唯一の方法である。世間よく、自分は生れながら不運であると諦める人があるが、これらも右の理を知らないからで気の毒なものである。また本医術の治療士も霊衣の厚い者程治病成績が良い。また多くの患者を救う程、その治療士は多数者から感謝を受ける結果、霊衣は弥々(いよいよ)厚く多々益々成績優秀となる訳でこういう人は私の弟子中に多数あるのである。

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